デート-4

すっかり日が落ち、空に星が出始めた頃。
遊園地と言えば、乗らない訳にはいかないのが観覧車だ。
でも、華代は夜景を見る事が出来ない。
それにカップルのイメージがある観覧車に、僕は乗るのを躊躇って言い出さなかった。
その躊躇いを払い除けるように、君が観覧車に乗りたいと言い出した。
そして僕らは今、隣同士でゴンドラの中に座っている。

時間は夜の8時を回っていた。
ゴンドラから見る景色はとても煌びやかで、昼間に乗ったジェットコースターやメリーゴーランドが光を発しながら動いているのが見えた。
君はゴンドラに乗り込んでから経ってから口を開いた。

『夜景、綺麗ですか?』

「困らせる事を聞くんだね。」

『ごめんなさい。』

僕は哀しそうな表情をする君の肩を軽く引き寄せた。
君から緊張が伝わる。
君は僕の肩に、ゆっくりと頭を預けた。
如何しよう、嬉しい。

『今日はありがとうございました。』

「僕こそ、楽しかったよ。」

僕は優しく微笑んだ。
それに気づいたのか、君も綺麗に微笑んだ。
君は僕がプレゼントしたあのネックレスをぎゅっと握った。

『私、先輩に出逢えて本当に良かったです。』

「それは僕の台詞だよ。」

もっと君の顔を近くで見ようと思い、君の顔を覗き込んだ。
でも君の目に涙が光っているのが見えて、僕は目を見開いた。

「華代?」

『……。』

君は目を伏せた。
その間も、ゴンドラは上へ進んでいく。

『手術の日が…決まったんです。』

「!」

君は僕に強く抱き着いた。
普段なら抱き着かれたら舞い上がってしまうんだろうけど、今はそんな余裕が全くなかった。

『5ヶ月後の、12月1日です。』

「かなり先だね。」

『腕の良い先生にお願いしたら、予約がかなり先になってしまったんです。

でも絶対に治したくて、その先生にお願いしました。』

僕も君を強く抱き締め返した。
君の声から覚悟が決まっているのを感じた。
先程まで絶叫マシーンで叫んでいたとは思えないくらいに、君の身体は小さかった。
僕は君を守るように、更に強く抱き締めた。

「皆がいるよ。

僕だって、傍にいるから。」

『先輩…。』

君はそっと顔を上げた。
その目は未だに不安そうに潤んでいた。
何かを感じたのか華代は目を閉じた。
同時に涙が一粒、君の頬を伝った。
君の華奢な肩を掴んで、泣いていても綺麗な君の顔に、そっと自分の顔を近付けた。
僕らは初めてキスをした。



2009.2.5




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