16-1

クィディッチ競技場に突如姿を現したアフロディーテは、唖然とするフリントの横を颯爽と通り過ぎ、マルフォイの襟首を掴んだ。
更に、杖先をマルフォイの首に捩じ込むように突き付けた。
マルフォイの顔が恐怖で歪み、震える手から最新型のニンバス2001が落ちた。
マルフォイは必死に虚勢を張った。

「こ…こんな事をしてもいいと思ってるのか?
父上に言いつけてやるぞ、スチュワート…!」
「あら、それはおめでたいわね。
新入生に杖を突き付けられて、怖くて手も足も出なかった事をご自慢のお父上様に報告するの?」

トロールのような巨体のフリントが、アフロディーテの腕を掴もうとした。
それが失敗に終わったのは、あの青い火花がフリントの足元にバチバチと現れたからだ。
フリントは飛び上がり、尻もちをついた。
マルフォイがアフロディーテの杖を怯えた目で見ながら言った。

「君が如何してそんなに怒る必要があるんだ…!」
「ハーマイオニーは立派な魔女よ」

初めて見たアフロディーテの一面に、俺は言葉が出なかった。
聖女と呼ばれるアフロディーテが、マルフォイの襟首を引っ掴みながら、杖を突き付けている。
普段の可愛らしさを知っている俺にとって、その威圧感と気迫は信じられないものだった。
マルフォイは震えそうな声で精一杯毒づいた。

「フン…僕は君が友人に話しているのを聞いたぞ、スチュワート。
君には父親がいないんだって?
君みたいな女の父親なんて、ろくでもない男だろうね」
「あなたなんかが…私の父を安易に語らないで!」

突風が吹き荒れ、アフロディーテから何か強い力を感じた。
これはアフロディーテの威圧という名の魔力だろうか。
俺は手に持っていた箒が飛んでいきそうになり、しっかりと地を踏みしめた。
マルフォイはついに腰を抜かした。
アフロディーテがマルフォイの襟首を解放した途端に、スリザリンの三人が杖をアフロディーテに向けた。

「アフロディーテ、危ない!!」

俺がアフロディーテの名前を叫んだと同時に、スリザリンの三人はそれぞれ別の呪いを叫んだ。
三本の杖から呪いが飛んだけど、アフロディーテはそれら全てを一度の盾の呪文で弾いた。
続けて何度も繰り返して飛ぶ閃光の呪いを、いとも簡単に防ぎ続けた。
呪いの雨が止むと、アフロディーテの杖先から線香花火のように火花が散った。
その火花はレイブンクローを彷彿とさせる青色だった。
アフロディーテがスリザリンの選手ににじり寄ると、あいつらは冷や汗をかきながら数歩下がった。
マルフォイが落ちていた箒を掴み、グラウンドから城に向かって駆け出した。

「行くぞ…スネイプ先生に報告だ!」

フリントはアフロディーテを強く睨んでから、マルフォイを追いかけた。
スリザリンがいなくなったグラウンドに、ロンがナメクジを吐く音がした。
アフロディーテはハリーとハーマイオニーに支えられているロンに駆け寄った。

「大丈夫?」

ロンは返事が出来る状態ではなかった。
ハリーが代わりに言った。

「大丈夫じゃないみたいだ。
ハグリッドの所に行ってくる」
「気を付けて」
「ありがとう、アフロディーテ。
君って凄いんだね」

ハリーはとても感心していた。
すると、ハーマイオニーがアフロディーテに駆け寄り、勢いよく抱き着いた。
アフロディーテに背中を撫でられながら、ハーマイオニーは涙声で言った。

「アフロディーテ…ありがとう」
「ハーマイオニー、自信を持って?
あなたは立派な魔女なんだから」
「ありがとう…本当に…ありがとう」

アフロディーテは泣きそうになっているハーマイオニーに微笑んだ。
精一杯の笑顔を見せたハーマイオニーは、ハリーと一緒にロンを支えながら歩き去った。





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