15-2

旧型のクイーンスイープを握った俺は、更衣室を後にした。
すっかり昇った太陽が、クィディッチ競技場の芝生を照り付けている。
オリバーはどれだけ長く大演説をしていたんだろうか。
その大演説中、俺は半分寝ていたし、もう半分はアフロディーテの事を考えていた。
グラウンドに出ると、観客席のスタンドに座っているロンとハーマイオニーを見つけた。
ハリーの練習を見学しに来たんだろう。
俺は箒に跨り、フレッドとハリーと一緒に空中に舞い上がった。
競技場の周りを三人で競争しながら、全速力で飛び回った。

「カシャッカシャッて変な音がするけど、何だろ?」

フレッドがそう言ったから、俺はスタンドの方を見た。
カメラを掲げている小柄な少年が、最後部の座席に立っていた。

「こっちを向いて、ハリー!」

ハリーのファンか?
黄色い声援が鬱陶しくて、フレッドが顔を顰めた。

「誰だあいつ」
「全然知らない」

ハリーは面倒臭そうな顔でそう言うと、少年から離れた。
オリバーが此方に飛んで来て、不機嫌全開で言った。

「なんであの一年坊主は写真を撮ってるんだ?
我々の新しい練習方法を盗みに来た、スリザリンのスパイかもしれないぞ」

嫌な集団を七人分発見した俺は、オリバーに言った。

「スリザリンにスパイなんて必要ないぜ」
「なんでそんな事が言えるんだ?」
「ご本人たちがお出ましさ」

グリーンのローブを着込んだスリザリンの選手たちが、競技場に入って来た。
オリバーは怒りを露わにした。

「この競技場を今日予約してるのは僕だ。
話をつけてくる!」

これは揉めそうな予感がするぞ。
燃え盛っているオリバーを先頭に、俺はフレッドとハリーを連れて後を追った。
箒から降りた俺たちは、オリバーが「フリント!」と怒る声を聞いた。
マーカス・フリントはスリザリンのクィディッチチームのキャプテンだ。

「今すぐ立ち去って貰おう!」
「ウッド、俺たち全部が使えるくらい広いだろ」

グリフィンドールとスリザリンのチームは何をしなくても喧嘩腰だというのに、今日はますます酷い。
騒ぎを聞きつけたアンジェリーナ、アリシア、ケイティがやってきた。
オリバーは険しい表情で言った。

「僕が予約したんだぞ!」
「こっちにはスネイプ先生が、特別にサインしてくれたメモがあるぞ」

スネイプ先生の特別なサインだって?
オリバーはメモを受け取り、それを俺たちにも聞こえるように読み上げた。

「私、スネイプ教授は、本日クィディッチ競技場において、新人シーカーを教育する必要がある為、スリザリン・チームが練習することを許可する」

新しいシーカーだって?
誰だ、それ?
大きな六人の選手の背後から、小柄な選手が現れた。
プラチナブロンドの髪に、嫌味が得意なスリザリン気質の二年生――ドラコ・マルフォイだった。
出た、こいつ。
フレッドが嫌悪感を剥き出しにした。

「ルシウス・マルフォイの息子じゃないか」
「ドラコの父親を持ち出すとは、偶然の一致だな」

フリントとマルフォイが言うには、ルシウス・マルフォイがスリザリンのチームに贈り物をしたのだという。
七人全員がピカピカに磨き上げられた新品の箒を持っていた。
その柄には金色の文字でニンバス2001≠ニ描かれていた。
ハリーがニンバスの旧型である2000を持っている。
どっちのニンバスシリーズも、俺とフレッドが持つ旧型のクイーンスイープ5号とは格が違う箒だ。
この箒が今年の敵になるっていうのか?
そりゃ酷い話だ。

すると、ロンとハーマイオニーがスタンドから降りて様子を見に来た。
ロンがマルフォイを見ながら顔を歪めた。

「こんなとこで何してるんだい?」
「ウィーズリー、僕はスリザリンの新しいシーカーだ。
僕の父上がチーム全員に買ってあげた箒を、みんなで賞賛していたところだ」

マルフォイの嫌味ったらしい話よりも、オリバーの大演説の方がよっぽどマシだ。
マルフォイは蔑むような口調で続けた。

「グリフィンドールも資金集めをして、新しい箒を買えばいい。
クイーンスイープ5号を慈善事業の競売にかければ、博物館が買い入れるだろうよ」

スリザリンの七人は馬鹿にしたように大笑いした。
畜生、殴りたくなってきた。
それでもニンバス2001が羨ましいという気持ちがあって、余計に腹が立った。
ハーマイオニーが毅然として口を挟んだ。

「少なくとも、グリフィンドールの選手は誰一人としてお金で選ばれたりしてないわ。
こっちは純粋に才能で選手になったのよ」

マルフォイはハーマイオニーを睨み付けた。

「誰もお前の意見なんか求めてない。
この穢れた血≠゚」

穢れた血。
グリフィンドールの選手全員から怒りの声が上がった。
俺とフレッドはマルフォイに殴りかかろうとしたけど、巨体のフリントが前に立ちはだかった。
怒ったロンがロープから杖を出し、マルフォイに振り被った。

「言ったなマルフォイ!
ナメクジ喰らえ!」

折れた杖は言う事を聞かずに、緑の閃光がロンに逆噴射した。
自分の呪いを受けたロンは芝生に尻もちをついた。
おまけに、ヌメヌメに光るナメクジを口からゲロッと吐いた。
何だこれ…気持ち悪い。
スリザリンから爆笑が聞こえたけど、それをバチバチとした音が遮った。
奴らの足元に青い火花のような光が飛び散り、マルフォイが悲鳴を上げて飛び上がった。
芝生を踏み締めて突如現れたのは、俺が夢中になっている女の子だった。



2019.8.20




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