乱れる心 後編-1

遥か太古の昔、花怜の先祖である人間の巫女は、並外れた霊力の持ち主だった。
その力が、花怜に覚醒した。
妖怪でありながら霊気を持つ花怜はあらゆる修行を積み重ね、霊気の制御が可能になったのだという。

花怜の身体が妖気と霊気に蝕まれるのを、今日初めて目の当たりにした。
あの時、もし私が花怜の元へ駆け付けなければ、花怜は命を失ったかもしれない。
やはり、傍にいてやらなければならないと強く思った。

あれから私は意識を失った花怜を連れ、森へと戻った。
花怜に懐いている阿吽は、花怜の様子を近くで見守っている。
夜になっても花怜は目を覚まさず、私の腕の中で眠り続けている。
殺し合った妖気と霊気を消費し、身体に負荷がかかったのだろう。
普段よりも花怜の妖気を少なく感じる。

「殺生丸さまー!」
「水を汲んで参りましたぞ。」

花怜の竹筒に邪見とりんが水を汲んで来た。
りんは他にも木の実を持っている。
花怜の為に採って来たのだろう。

「花怜さま、起きないね。」
「仕方あるまい。
妖気と霊気を同時に持つ妖怪なぞ、わしでも聞いた事がない。」

邪見とりんは阿吽の隣に腰を下ろした。
二人には、花怜が体内で二つの気を制御出来なくなったとだけ説明してある。
邪見が私に訊ねた。

「少しお休みになられては?」
「花怜さまのことなら、りんたちが様子を見れるよ!」
「何を張り切っておる。
ガキは早う寝んか!」
「ガキじゃないもん!」

花怜が眠っているというのに。
煩い、黙れ。
そう言おうとした時、花怜が微かに身動ぎした。

『ん…。』
「あっ、花怜さま!」
『…りん?』

花怜は薄く目を開けた。
りんが花怜の手を両手で握った。
邪見は竹筒を持ちながら言った。

「全く、殺生丸さまを心配させおって。」
『ごめんなさい。』

花怜はりんの手を握り返し、私を見上げた。

『殺生丸さま…。』
「まだ寝ていろ。」
『…はい。』

花怜は弱々しく微笑み、頷いた。
りんが邪見の竹筒を受け取り、花怜に見せた。

「お水飲む?」
『うん、ありがとう。』

竹筒を受け取った花怜は、水をゆっくりと飲んだ。
喉が渇いていたのか、全て飲み切った。

『ありがとう、ごめんね。』
「早く元気になってね。」

花怜は頷き、再び目を閉じた。
まだ花怜を動かさない方がいい。
邪見たちが寝静まった後も、私は花怜の様子を見ていた。





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