乱れる心 後編-2
全員で一箇所に集まり、夜を過ごした。
普段なら私と花怜だけが別の場所で眠るが、今夜は特別だった。
焚き火も消え、空が明るくなり始めた頃。
花怜が目を覚ました。
「起きたのか。」
『…はい。』
花怜は手を伸ばし、私に抱き着いた。
その身体を引き寄せ、温もりを感じた。
二人で話したい。
私は花怜を片腕に抱いたまま立ち上がった。
『もう歩けます。』
「じっとしていろ。」
その場を後にすると、巨木の裏に腰を下ろした。
花怜は私に抱き着く腕を解かずに、話し始めた。
『…愚かですよね。
自ずから人里に降りるのに、あのような目に遭うなんて。』
花怜の声は哀しげだった。
私は腕の力を込めた。
「私の傍にいろ。
人里へ降りる時は迎えに行く。」
『…御迷惑ではありませんか?』
「遠くにいる方が迷惑だ。」
花怜はそっと腕を解き、私の目を間近で見た。
不安に揺れる瞳が蒼く、美しい。
「傍にいる方が迷惑をかける…とでも言いたげだな。」
『…何故分かったんですか。』
「顔を見れば分かる。」
私は花怜に顔を寄せ、唇を重ねた。
口付けを懐かしく感じてしまうのは、花怜を失うのではないかと恐れたからだ。
またあのような状態に陥った時、花怜の心を鎮められるのは私だけだ。
「私がいなければ困るだろう。」
『困ります、とても。』
頬に添えられた花怜の手が温かい。
吸い寄せられるかのように、二人で唇を重ねた。
一度手に入れた時から、手離すつもりなど微塵もない。
お前は私の傍が一番だと言った。
なら、大人しく傍にいればいい。
2018.8.17
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