白状

向かう先に人里がなく、犬夜叉さま一行と行動を共にしてから三日が経過した。
広い野原には、所々に岩がある。
其処で私たちは夜を過ごす事になった。

「花怜ちゃん、ありがとう。
一緒にいてくれると本当に心強いわ。」
『私の方こそ、皆さまと一緒だと楽しいです。』

かごめちゃんと珊瑚ちゃんとは女同士というのもあり、打ち解けるのは早かった。
花怜ちゃん≠ニ呼ばれるのは新鮮で、なんだか嬉しい。
一方の私は二人からちゃん付けして欲しいと言われたけれど、三日目になっても未だに慣れない。
付近に小川を見つけた私は、かごめちゃんと七宝ちゃんと一緒に水汲みに来ていた。

「それにしても、犬夜叉が心配ね。
明日には鉄砕牙が直ってくる筈だけど…。」
「まずい時≠ノ引っかかったのう。」

一昨日、犬夜叉さまはかごめちゃんを通して、鉄砕牙の話をしてくれた。
殺生丸さまの父上さまの牙から造られた鉄砕牙は、奈落の分身だった鬼の妖怪によって砕かれた。
鉄砕牙は刀々斎さまという刀鍛冶の元で修理中で、明日には戻る筈なのだという。
そして、鉄砕牙は殺生丸さまが欲している刀だ。
殺生丸さまは大妖怪だった父上さまの形見を犬夜叉さまが所持するのを認めていない。
犬夜叉さまは鬼の妖怪に鉄砕牙を砕かれた際、まるで妖怪のように変化したのだという。
変化したまま鬼の妖怪を殺し、かごめちゃんの言霊で鎮まった――

「でも、花怜ちゃんがいてくれるから犬夜叉もほっとしてるのよ。」
『そうだといいんですが…。』

この三日間、襲って来た妖怪は全て私が始末したし、無茶をした犬夜叉さまが怪我をした際は治療した。
犬夜叉さまも私の戦闘能力を認めてくれているように思う。
水汲みを終えた私たちが犬夜叉さまたちの元へ戻ると、まずい時≠フ理由が其処にあった。

「ったく、ちくしょーめ。
遅ーな、刀々斎のじじいはよー。」

今宵は新月。
半妖である犬夜叉さまの妖力が消える日だったのだ。
その日に丁度、私は皆さまに同行してしまったようだ。
変化し始めた犬夜叉さまを見た時はとても驚いた。
弥勒さまが改めて説明してくれた。

「犬夜叉たち半妖は、月に一度妖力を失い、このように人の姿になるのだそうです。
こんな時に襲われたら命に関わる。
だから犬夜叉が朔の日に妖力を失う事は、絶対に秘密…。」

犬夜叉さまは場が悪そうな表情をしている。
珊瑚ちゃんにもこの姿を見られるのは初めてらしい。

「だんだん秘密知ってる奴の人数が増えてくじゃねーかよ。」
「いいじゃない。
仲間が増えたって事でしょ。」

かごめちゃんは嬉しそうだ。
知り合って三日目の私が犬夜叉さまの秘密を知ってしまった事は、やっぱり申し訳なかった。
犬夜叉さまの髪色は黒で、耳もなくなっていた。
完全に人間の姿だった。

『なんだか悪い事をしましたね。』
「犬夜叉の妖力がない今、花怜さまの存在はとてもありがたいのです。」

弥勒さまがそう言ったけれど、犬夜叉さまは不貞腐れた表情で私を睨んだ。

「言っとくけどな、俺はまだお前を信用してねえぞ。
お前の匂いはやっぱり変だ。」

私は緩く微笑んだ。
そう思われるのも無理はないだろう。
殺生丸さまも私を疑ったのだから。
かごめちゃんが犬夜叉さまを制したけれど、犬夜叉さまは止まらなかった。

「話しやがれ。
てめえ、何者だ?」
『……。』
「俺だけこの格好見られたんじゃあ不公平だろ。」
「ちょっと犬夜叉!
花怜ちゃんがいてくれて安心してる癖に、何言ってるのよ!」
「う、うるせえ、黙ってろ!
かごめだって、井戸に繋がってる別の国から来たって話しただろ。」

かごめちゃんは今から約五百年後の世界から来たという。
とある井戸に飛び込めば、別の世界に繋がっているというのだ。
かごめちゃんは不思議な物を沢山持っているし、私はその話を信じた。
弥勒さまも珊瑚ちゃんも、何故奈落を追っているのかを話してくれた。
なのに私は、正体は愚か、殺生丸さまとの繋がりさえ明かしていない。

『私は妖怪です。』

私の突然の告白に、四人全員が目を見開いた。
この方々なら信頼出来ると思った。
殺生丸さまと同行していた事は話せないけれど、正体だけなら話しても構わないだろう。





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