遭遇-2

「花怜さまは蒼の巫女と呼ばれていて、とても強い霊力を持つ有名な巫女さまです。
その通力で様々な流行病などを治療し、人助けをしていると聞きました。」

弥勒さまの説明を聞きながら、私たちは歩き続けていた。
かごめさまが私に訊ねた。

「じゃあ今も人里に向かってたの?」
『はい。』

殺生丸さまの元へ戻った後も、人里には訪れようと思っている。
きっと殺生丸さまも了承してくれるだろう。

『皆さまは何故旅を?』
「あたしたちは奈落っていう妖怪を追ってるの。」
「花怜さまは奈落を知っていますか?」

奈落――その名に聞き覚えがあった。
殺生丸さまと邪見さまが口にしていた名だ。
知らない振りをする訳にはいかないけれど、安易に殺生丸さまの事を話す気にはなれない。

『知っています。』
「ほんとか?!」

犬夜叉さまが喰い付いて来た。
期待させてはいけないと思い、言葉を加えた。

『巫女殺しをした妖怪だとしか聞いていません。
何処で何をしているかは分かりません。』

実際、私は奈落に逢った事がない。
その妖気を一度でも記憶すれば、結界などの気配を追えるのだけれど。
奈落は殺生丸さまと共に行動していた私の存在を耳にしているのだろうか。

山道を辿りながら、弥勒さまと珊瑚さまは奈落を追う理由を個人的に説明してくれた。
ただ、犬夜叉さまは何も話してくれなかった。
複雑な事情があるのだろう。
其方が話さない内容があるのなら、此方としても殺生丸さまと共に旅をしていると話すつもりはなかった。
殺生丸さまと奈落の接点を、この方々は知らない筈だから。



2018.4.14




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