芸術的な着物姿

サソリの部屋で深夜の食事を終えた二人は、サソリからさっさと追い出されて部屋に戻った。
一日振りの食事に満足した。
深夜にも関わらず、食事を提供してくれた宿主に感謝した。
デイダラは隣同士で歯を磨く雅に、歯ブラシを咥えながら訊ねた。

「そういえば、城から何貰ってきたんだ?」
「俵のお米とお酒と、他にも着物などをありがたく頂きました」
「着物?」

雅が、着物。
デイダラは鏡に映る雅を見つめた。

「どんな着物だ?」
「確か長裾の着物でした」

足元が見えないように、裾が長く広がっている着物だ。
高貴な身分の女性が着る和装で、高く売れる。

「着て欲しいぞ!」
「え?」
「今すぐ!」

デイダラは雅の両肩を掴んだ。
とんでもない芸術を目の当たりに出来るかもしれないというのに、引き下がる訳にはいかない。
売ってしまうのなら、その前に着て欲しい。
雅は歯ブラシを咥えたままポカンとした。
デイダラの目が羨望でキラキラしている。

「頼む、雅!」
「えっと…そこまで言うなら」

手を突き上げて大喜びするデイダラに、雅は困ったように微笑んだ。

「私の着物姿なんて大した事ありませんよ?」
「そんな訳ねーだろ!うん!」

デイダラは迅速に歯磨きを済ませ、着物が封印されているという巻物を雅から先に預かった。

「解の印は何だ?」
「私か角都さんの声で解≠ナす」

雅の解≠ニいう言葉に反応し、巻物から十着程の着物が並んで現れた。
赤青黄を始め、様々な色の生地がある。
この巻物は声に反応するように術をかけてあるのか。
デイダラはそう突っ込むのを後回しにした。
着物選びに集中したからだ。

「これがいいぞ!うん!」

デイダラの隣に来た雅は、デイダラが指差した着物を見た。
生地も帯も全て純白の着物だ。
雪女と呼ばれる雅に似合いそうな着物だった。

「これですね」
「楽しみだ!」

雅はデイダラが選んだ純白の着物以外を再び封印した。

「オイラは洗面所で待機してるから、着替えたら呼んでくれよ」

子供のように無邪気に笑うデイダラが可愛くて、雅も微笑んだ。
自分の着物姿程度で喜んで貰えるのなら、幾らでも着よう。
デイダラが洗面所のドアを閉めたのを合図に、雅は着替え始めた。





page 1/2

[ backtop ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -