川で氷遊び

小川に到着した二人は、白い砂利道を歩いた。
デイダラは川縁で上着を全て取っ払い、川の水に浸してバシャバシャと洗った。
水質は良く、水流も穏やかだ。

「取れますか?」
「心配要らねーよ。」

雅はデイダラが洗うのを見守りながら、その上半身を見た。
雅よりも肩幅が広く、鍛えられた逞しい身体だ。
一昨日の夜、この身体に抱かれたのだ。
顔が熱くなるのを感じた雅はデイダラに背を向け、自分の顔を両手でペチペチと叩いた。

「何してんだ?」
「いえ、何でも」

雅は平静を装ったつもりだったが、実際は微妙だった。
デイダラは洗った黒装束と忍服をきつく絞り、鳥型粘土の翼部分にかけた。
後は乾くのを待つだけだ。
次にまたあの老婆の宿で洗濯して欲しいものだ。
大人しくその場に留まっている鳥型粘土は、頭に笠、両方の翼には服をかけられている。
何だか面白可笑しくて、雅はクスッと笑った。

「可愛いですね」
「こう見ると変だな、うん」

デイダラも自然と笑みが零れた。
お前の方が可愛いぞ、と言っても否定されるのだろう。
デイダラは雅の背後から忍び寄ったが、雅も忍だ。
素早く振り向かれ、小首を傾げられた。
背後からガバッと抱き着こうと企んだのは失敗に終わったが、雅が頬を赤らめているのを見て口角を上げた。

「何を意識してんだ?うん?」
「な、何の話でしょう?」
「オイラの事コソコソ見てるだろ」

デイダラは雅の首筋に片手を伸ばすと、黒衣の下に入れ込んである髪を全て外に出した。
艶やかな髪が露になり、風に揺れた。
デイダラはそれを一束手に取り、指に通した。

「髪、隠すの勿体ねえな」
「フードを被る時に邪魔ですから、入れ込んでおくんです」

雅はデイダラに頬を撫でられた。
その手が慈しむように優しくて、そっと目を伏せた。

「雅はホントに綺麗だな」
「そうでしょうか…?」
「オイラの自慢の女だ」

この顔と白い肌は黒衣やフードで隠さなければ、雪女だと気付かれてしまう。
デイダラは雅の頬を撫でていた手をその後頭部に回し、そっと引き寄せた。
雅はデイダラの逞しい胸板にある紋様に手を置き、遠慮がちに寄り添った。

「デイダラもかっこいいですよ」
「うん…?!」
「二年前に初めて逢った時からそう思っていました」
「……マジか」

デイダラは身体が熱くなるのを感じた。
自分の体温が上がれば上がる程、雅の低体温が心地良い。

「二年前か…随分と懐かしく感じるな」
「デイダラと戦った後、お怪我は大丈夫かと気になっていました」
「大丈夫じゃなかったぞ…うん」
「致命傷を治療しただけでしたから」

デイダラは怪我の療養中、サソリに何かと扱き使われた。
芸術性の欠けらも感じない傀儡に付き合わされ、退屈したものだ。
当時を思い出したくないデイダラは、雅の耳元に唇を落とし、その頭に頬を擦り寄せた。
雅は擽ったそうに笑った。

「甘えんぼさんですね」
「うるせー」

デイダラの拗ねたような声すら愛しくて、雅は髷のある頭を撫でた。

「明日の任務が終われば、また別行動か…」
「また逢えますよ」
「角都の旦那が言った通り、オイラたち暁はもうじき本格的に動くんだぞ。
逢えなくなるだろ…」
「私から逢いに行きますから」

デイダラは目を見開いた。
雅はデイダラの頭を撫でながら、デイダラに安らぎを感じさせる声で言った。

「逢えなくなる時間を嘆くより、今こうやって一緒にいる時間を大切にしませんか?」

雅の台詞はデイダラの心を前向きにした。
二人はお互いの顔を見つめた。
デイダラが自然と顔を寄せた時、唇が触れ合う寸前で雅が呟くように言った。

「なので、水遊びしませんか?」
「………うん?」

雅は呆気に取られたデイダラをその場に残し、川に向かって走った。
黒衣を脱ぎ捨てると、デイダラに大きく手を振って催促した。

「早くー!」

忍服が透ける雅を妄想したデイダラは、鼻の下が伸びそうになった。
雅の忍服は水に濡れた程度では透けない素材だ。
いいや、何としても脱がせてみせようではないか。
デイダラは勝手に意気込み、雅に向かって突っ走った。





page 1/2

[ backtop ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -