初デートで逃走劇-2

とある国の賑やかな町に出た二人は、買い物を楽しんでいた。
デイダラは良質な粘土を買えたし、雅も巻物の補充が出来た。
雅が数ヶ月前に城から盗んだのだという金のかんざしを質屋に売ると、驚く程の額が返ってきた。

「見つかってしまいましたね」

雅は人混みでごった返す商店街の中で、デイダラに手を引かれながら歩いていた。
その手にはチョコレートアイスのクレープを持っている。
イカ焼きをもぐもぐ頬張っているデイダラは舌打ちをした。
折角の初デートだというのに。
お互いにビンゴブックに載るS級犯罪者だし、本来はのんびりデートなどしていられないのだ。
人混みが二人の姿を上手く隠してくれていた。

「三時間は遊べたし、仕方ねーか」
「一時間もいられないと思っていましたからね」

商店街の中、誰かに追われているのが分かる。
賞金稼ぎ、他国の追い忍、もしくはこの国を警備する忍かもしれない。
特に雅は億を超える賞金がその首にかかっている。
黒衣のフードを目深に被る雅と、暁の黒装束に笠を被るデイダラ。
人混みに紛れているとはいえ、怪しい。
雅はクレープのホイップクリームをぺろっと舐めた。
その可愛らしい仕草にデイダラは赤面したが、雅に萌える時間は後々沢山ある。

「何人いるか分かるか?うん?」
「五人はいます」

雅は感知を得意とする。
デイダラはイカ焼きを全て食べ終わり、串だけが残った。

「逃げるぞ」
「このアイスを食べ終わってからではいけませんか?」
「アイスならお前の能力で凍らせとけ」
「あ、なるほど」

自分の能力だというのに、忘れていたかのような言い草だ。
雅とデイダラは視線を合わせた。
それを合図に、左右に分かれて駆け出した。
すると、デイダラとは別の男の声がした。

「逃すな!追え!」

里抜けして以来、追い忍に追われている雅は、逃げるのがとても得意だ。
たとえ、それがどのような場所でも。
煉瓦に囲われた路地裏に入り込み、コンクリートの地表に透明な氷を張った。
二人の賞金稼ぎは滑って転倒しそうになり、何とか踏ん張って堪えた。
しかし、高く跳び上がっていた雅に頭を足蹴にされ、ついに転倒した。
フードが脱げないように押さえている雅は、つるつると滑っている賞金稼ぎを放ったらかし、建物の屋上へと跳んだ。
デイダラとは何処かで待ち合わせしている訳ではない。
派手な爆発音で居場所が分かるからだ。
三発分の轟音が聞こえた方向へ走ると、鳥型粘土に乗ったデイダラを発見した。

「雅、こっちだ!」

雅は高く跳び上がり、デイダラに差し出された手を取って鳥型粘土に乗り上げた。
被っている笠を手で支えているデイダラは口角を上げ、この逃走劇を楽しんでいた。
町の建物の屋上を走って追いかけてくる賞金稼ぎは、どうやら忍のようだ。
雅はクレープに浅く息を吹きかけ、アイスを瞬間冷凍した。
それを見たデイダラは便利な能力だと感心した。
雅は更に息を深く吸い込み、追ってくる賞金稼ぎに向かって氷の吐息を吹きかけた。
それは強烈な吹雪となり、屋上に干されていた洗濯物や物置が凍り付いた。
二人の賞金稼ぎは身体の一部が凍り、派手に転倒した。

「あばよ!」

嘲笑したデイダラはそう吐き捨て、雅と共に空へと逃げ去った。
雅はターゲット以外を殺さない。
デイダラは賞金稼ぎの三人を始末したが、先程の二人は凍傷のみで済んだだろう。

「なかなか楽しい逃走劇だったな、うん。」

デイダラは笠を脱ぎ、鳥型粘土の頭に無造作に被せた。
そして雅の腰を引き寄せ、飛行する高度を上げた。
フードを脱いだ雅はデイダラに微笑み、大事に持っていたクレープの皮を頬張った。
氷の吐息のせいで凍っているが、それもまた美味しい。
その口元についたホイップクリームに誘われたデイダラは、顔を寄せてぺろっと舐め取った。
雅は硬直した。

「な…!」
「美味いな、うん」

何かを企んだデイダラはクレープを持つ雅の手首を掴んだ。
クレープのホイップクリームを口に含み、頬を赤らめている雅に口付けた。
雅の唇を舌で割り、たっぷりのホイップクリームを舌同士で絡め合った。

「ん、ん…ぅ」
「…っ、は」

ふわっとした甘さが口一杯に広がる。
クレープのアイスが溶けるのも忘れ、二人はお互いの唇を求めるのに夢中になった。
デイダラが雅を強く引き寄せた時、胸元に冷たい感触がした。

「冷てっ」
「あ…」

デイダラはずっと雅の手首を掴んでいた。
思わず引き寄せた際に、クレープのアイスが黒装束に付いてしまったのだ。
雅は狼狽えた。

「ごめんなさい!どうしよう…」
「雅が謝る必要ねえよ。
オイラのせいだろ、うん」

デイダラは黒装束を脱ぎ、腕に持った。
アイスは忍服にも染み込んでいた。

「洗わないといけませんね」
「川に行くか」

二人は近くの川を新たな目的地に設定すると、鳥型粘土の飛行する方向を変えた。



2018.7.30




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