恋人とのバレンタインデー

バレンタインデーというのは、俺にとって毎年煩わしい日だった。
下駄箱の中のチョコレートや手紙は俺を悩ませるし、呼び出されて直接渡されるのも対応に困る。
しかし、今年は恋人がいる。
今日という日を上手く過ごせるだろうと思っていたが、気持ちが浮き立ち過ぎたのだろうか。

昼休み、俺の事が2年前から好きだったという女子に呼び出された。
校舎裏へ向かう途中、突然手を繋ぐかのように掴まれ、立ち止まって離れた。
ならばと片腕にしがみ付かれ、校舎裏へと引っ張られた。
如何振り解けばいいかと困惑していると、其処には愛がいた。
見られてしまった。
二人の友人と越前も一緒だった。
愛が片手で頭を抱えた時、俺は駆け寄ろうと思ったが、越前の方が一歩早かった。
愛の手を握り、共に走り去ってしまった。

―――――
用事があるなら、あたしは先に帰るけど
―――――

6限の終了時、追い討ちをかけるかのようなメッセージに愕然とした。
HRを終えて下校時間になると、教室で帰宅準備をしながら愛に電話をかけた。
しかし、応答がない。
誰かに呼び止められる前に、早足で下駄箱まで向かった。
階段を途中まで降りると、恋人の切羽詰まった声がした。

『やっぱり渡せない…。』

「心配し過ぎだよ。」

『胃が痛い。』

「本命なんだから、渡さないと。」

既にローファーに履き替えている愛は、兄の不二の前で肩を落としていた。
俺が自分の下駄箱を開けると、今朝と同じく包装箱が幾つかあった。
それを紙袋に入れ、愛の元へと向かった。
そして、背後から愛の左手を掴んだ。
驚きで肩が跳ねた愛が素早く振り返り、俺に目を見開いた。

『…国光…。』

「あのメッセージは何だ。

用事などない。」

愛は視線を落とした。
周囲の生徒からの視線が鬱陶しい。
不二が困り顔で尋ねた。

「喧嘩でもしているのかい?」

『違う…。』

「不二、愛は連れていくぞ。」

「ご自由にどうぞ。」

手を振る不二に見送られ、顔を真っ赤にする愛の手を引いた。
愛が突っ張ろうとするが、そうはさせない。

「来い。」

『見られてるから離して…!』

まだ校内にも関わらず、愛の手を引いた。
下校する生徒からの視線は無視だ。
彼女を連行しようとする彼氏になっている俺は、足早に学校から出た。





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