龍「…あったな…。そんなことも」
あのときの双葉の顔は…恐らく一生忘れない。
赤くなるを通り越してトマトだった。
あそこまで純粋な人は、後にも先にもいなかった。
あのときなんであんなことをしたのかは、今でもよくわからない。
ただ、離れたくなかったんだ。
?「だから、俺が持ってくっつってんだろ!」
?「ヤダよ!僕が行く!」
?「は、な、せ!」
?「い、や、だ!」
なんだか外が騒がしい。
起き上がって部屋の外に出ると、雪桜と氷雅が電話の子機を取り合っていた。
龍「なにしてるんだ?」
雪「あっ!兄さん!」
氷「お兄ちゃん、あのね!」
雪「だから俺が言うって言ってんだろが!」
氷「ヤダ!僕が言う!」
龍「わかった、わかったから。どうしたんだ?」
雪氷「「今鈴蘭さん(鈴蘭お姉ちゃん)から兄さん(お兄ちゃん)に電話があったんです(あったの)!」」
龍「そうなのか?悪いな」
そういいながら子機を受け取る。
龍「もしもし?」
鈴『龍様?急に電話してごめんなさいね。今、大丈夫かしら?』
龍「大丈夫だ。どうした?」
鈴『次の日曜日、お店がお休みなのだけれど…良ければどこか行かないかしら?』
龍「日曜日?…俺も空いてる」
鈴『本当?』
龍「ああ、行きたいとこ考えといてくれよ」
鈴『ふふ、楽しみにしてるわね』
電話を切ると、弟たちが目をキラキラさせてこっちを見ていた。
雪「デートですか?」
龍「ああ、次の日曜日な」
氷「僕も無花果ちゃん誘おーっと!」
嬉々として伝書鳩に手紙を付けている氷雅。
雪「わ、私も、華淋さんに…ゴニョゴニョ」
龍はくすっと笑うと、窓の外を見た。
あのときはわからなかった恋愛感情。
鈴蘭に対する気持ちは間違いなくそれだ。
双葉さん、元気にしているだろうか。
誰も、弟たちも、中河も知らない、俺の思い出。
カラーの花言葉【
清浄】
ライラックの花言葉【
思い出】
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