店を出ると、外は暗くなりはじめていた。
時計は6時を指していた。
双「あ…もうこんな時間…」
龍「そろそろお開きにしましょうか」
双「はい。あの…ありがとうございました。私のお礼のはずなのに…なんか、色々案内させちゃって…」
龍「いいんですよ、俺も楽しかったので。あ、駅まで送りますね」
二人は駅に向かってゆっくり歩いた。
なんだか名残惜しかった。
でも、駅には存外早く着いてしまった。
龍はいまだに心のもやが晴れない。
次、いつ会えるかわからない。
いやむしろ会える日が来るのかもわからない。
双「じゃあ…ここで」
駅の改札で双葉は振り返った。
龍「はい。じゃあ…」
双「今日は…本当にありがとうございました。男性の方とこんなふうに接したの、初めてで…色々ご迷惑とかかけてしまいましたが…楽しかったです」
龍「俺も、久々に楽しかったです。帰り、気を付けてくださいね」
双「お気遣い、ありがとうございます。じゃあ…またいつか」
そう言って、双葉は背を向けようとした。
そのとき、なんだかわからないが、咄嗟だった。
龍「双葉さん」
双葉のショールを軽く引き寄せ…。
額に軽くキスをした。
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