二日後、龍のもとに一通のメールが届いた。
送り主は知らないアドレスだ。
中「ん?旦那、それ迷惑メールか?」
横から覗きこむ中河をひっぺがし、メールを確認すると。
[こんにちは。以前お世話になった双葉です。この間はありがとうございました。]
という簡潔なメール。
中「何すんだよ旦那!いいだろ見たって!」
龍「ダメだ」
中「なんでだよー!」
腕を突っ張って中河を遠ざけながら、器用に返信を打つ。
[メールありがとうございます。いえ、そんな大したことしてないですよ。]
すると、すぐにまた返事。
[よろしければ、お礼がしたいのですがいいでしょうか。]
ちなみにこの時、双葉は不審者なほどに挙動不審だった。
最初のメールを打つかどうかで二日間悩んだのだ。
双(わ、わ、返事きた!どどどどどうしよう!?)
それで思わず打ってしまったのが上のメール。
双(うわー!急にお礼とか言っちゃったよ!変だよね…)
♪ピローン♪
双「うわっ!」
[ありがとうございます。大したこともしていないのに、わざわざありがとうございます。空いている日があれば教えて頂けますか?]
双「こ、これOKっていうことかな?そうだよね…」
あたふたとしながら手帳で予定を確認する。
それを龍に知らせると、そのうちの1日が上手く合ったらしく、待ち合わせ場所や時間のメールが来た。
双葉はケータイを閉じながら、はやる鼓動を抑えていた。
龍はといえば。
中「なー!旦那!誰とメールしてるんだよー!」
龍「誰でもいいだろ」
中「な、まさか…柚樹じゃないだろうな!」
龍「それは違うから安心しろ」
中「じゃあ鈴蘭?」
龍「お前には絶対わからないから諦めろ」
などと攻防戦を繰り返していた。
当日の朝、双葉は最高潮に挙動不審だった。
そもそも誰かと待ち合わせなどあまりしないというのに、今回は相手が異性なのだ。
待ち合わせ場所に25分ほど早く着いてしまった双葉は、行く人来る人を目で追っていた。
すると、後ろから
龍「こんにちは。双葉さん」
と声をかけられ、振り向くと龍が立っていた。
初めて会った時とは違い、私服の龍。
なかなかお洒落だ。
双葉は第一声に困り、とりあえずぎこちない会釈をした。
龍「早いですね。俺も10分前目安に来たんですが」
双「す、すみません…」
龍「いえ、いいですよ。さ、行きましょう」
にっこりと笑い、龍は双葉をエスコートし始めた。
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