4.



「貴女はなぜ、ここへ? 今一番需要がある人物ではないのか? こちらがいた作品にも貴女のような人がいたから、不思議なのだが……」
「あら、ワタシに興味があるの?」
「そんなことよりも状況が呑み込めなくて、誰かの話を聞いて落ち着きたいんだ」
「素直な男は好きよ」

 怖いもの知らずな答えだ。
 それに彼女は満足したらしい。
 「ひっ」と恐れおののいた二人をひと睨みしてから、物憂げに話した。

「需要なんてあったって、書いている本人が満足しなくちゃ居る意味がないのよ。ワタシの場合、『神様』がお祭り企画として書こうとしていた姉ショタカップルが迷走した挙句、姉の役割をこんな姿にして形にしようとして……くじけてしまったの。だってこんなの姉ショタじゃないじゃない。女性であれば成立するものを、なぜかこうしてしまったの。ワタシは創作意欲の暴走の犠牲になったのよ」
「オレの場合は?」
「貴方は敵役の片腕としての役割があったと言っていたけれど、それって本当に貴方が背負うべき役割だったのかしら?」
「え?」
「主人公の成長や周囲の環境の違いを引き立てるには、まず主人公が何かを成そうとしなければならない。その何かを成すのに貴方が不要になってしまったのよ」
「そんな……」
「落ち込むのはまだ早いわ」

 綺麗に唇で弧を描いて、彼女は言う。

「貴方、まだ設定が柔らかいのよ。第一人称の歪みがそう言っているわ。それに最終局面まで貴方はよく頑張ったし、書き手もそんなところまで貴方を書き綴り続けた。貴方は必要だったけれど、役割を間違えられてしまっただけなの」
「それのどこが……早いっていうんだ」

 ぎりっと歯を噛みしめ、

「ここに来たらああして消えていってしまうんだろう!? だったらもう終わりじゃないか……俺はいらなかったんだ……」

 ロングコートはとうとう突っ伏すように椅子の上で上体を倒してしまった。



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