3.


「いろいろ無計画に増やし過ぎて、結局ストーリー上他のキャラクターで補えるってなった時、オレ達はこの部屋に放り込まれるんだよ。そして長い時間、じっと黙って過ごすんだ。いつかなくなるその日まで」
「いつか……なくなる……」
「あれを見てみろよ」

 指さす先に、青いドレスを身にまとったアルビノの女性が椅子に腰かけていた。
 長い髪をさらりと垂らし、姿勢を崩さず真っ直ぐに腰かけてる彼女の目は閉じられており、何より景色が透けて背もたれが見えていた。

「完全に忘れられたら、消えちまうんだ。アイツは元々主役だったのが、話そのものが立ち消えになって諸共お蔵入り。書かれてた紙ももうすぐ古紙回収とやらで跡形もなくされるんだとよ。つい昨日まではいろいろ話して聞かせてくれてたけど、潮時らしい。自分を保てなくなるとああなる。それも昨日、話してくれたぜ」

 それまで仲間の消滅をどんな思いで見つめてきたのか。
 そう呟いてやるせない様子で首を横に振ると、ドラゴンはぎゅっと斧を握りしめ、うつむいてしまった。
 「その隣でしゃがみ込んでる子どもはな」

 管理部が言う。

「とあるキャラクターの年の離れた妹になる予定だった子だ。親がいない設定だから兄弟しか当てがなかったのが、一人っ子設定が割って入ってきてあの様子らしい。脳内で作られた存在だから、いつ消えるかもわからないし、姿形も日によって変わる。この中で一番かわいそうだ」
「一番かわいそう?」

 そこで今まで黙っていた角の椅子に腰かけていた渋く低い声の女が、コルセットをしめたふんわりとした短いドレスを揺らし、立ち上がって声を荒げる。

「よくもそんな創造主みたいな目線で物事が言えるものね!! 一番なんてこの部屋の中では誰にも決められないんじゃないかしら!?」
「オカマは黙ってろよ」
「野蛮人も黙ってろやぶち殺すぞ若造」
「こういうのもいる」
「……それは、えっと」

 男の娘とドラゴンのやりとりをくいっと指した管理部をちらちらと伺ってから、あの、とロングコートは彼女に声をかけた。



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