1.


「働きたい」
「オレも働きたい」
「あんた、元々の仕事は?」
「ドラゴン狩り」
「そうか……なんかよくわからんが大変そうだな」
「アンタはどうなんだよ」
「管理部人事総務課」
「なんかよくわからんが大変そうだな」
「なんだ。おれ達お互い様か」
「そうだな」

 サラリーマン風のスーツ姿の青年と、大きな斧を持った戦士風の男が順にがっくりと項垂れる。
 白一色の椅子しかない部屋。
 窓の外は塗り付けたような真っ青な空が望めて、部屋と合わせて見た時の色調の激しさに目がくらむ。
 彼らの他には四人ほど同じように椅子に腰かけたり、床にしゃがん、立っていたりと思い思いに過ごしており、見える範囲では皆一様にその顔は沈んでいた。
 そこへ。こんこん、ノック音が響き、ぽんっと投げ込まれるように一人の人間が入って来た。

「うわっ!!」

 もつれて転んだその人物は人の姿をしており、真っ黒なロングコートに身を包んだ美丈夫だ。
 分厚い洋書だけを手にしていた彼は放り出されて憤ったようにドアを振り返ったが、そこにはもう壁しかない。
 望まぬ来室をしてしまった彼に構わず、すっとその形を消してしまった。

「よお、新人」

 ドラゴン狩りの男が片手を上げる。

「あんたもこんなところに来てしまったんだな」

 ぐるりと部屋の様子をぎこちなく見回した男は長い黒髪を揺らし、声をかけてきた管理職の男に戸惑いがちに寄っていった。
 ぐいっと二人から椅子が男に寄越される。



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