6.



 彼について分かったことがある。
 それは、誰かとたくさんの感情を比べては、その捉え方の差をものすごく気にしすぎてしまうこと。

「……」
「もっと嬉しそうな顔しなよ」
「だって……」

 困惑した子犬みたいな顔で彼は、

「まさか本当にチョコくれるなんて思ってなかったから!!」

 と叫んだ。
 今いる場所は下駄箱じゃなくて、通学路の途中にあるコンビニの外で、彼の手の中には私がたった今レジ袋から出したバレンタインチョコが抱えられている。

「ありがとう……大事にする……」
「ちょっと待ってその半額シール剥がすから」
「大事にする!!」
「シールも?」
「シールも!!」
「お、おう」

 動揺して男前な返事が口から出た。
 幸せそうにしている彼を見たらそれもなんだかどうでもよくなって、私はレジ袋をぐしゃぐしゃ言わせながら丸めて鞄に仕舞う。

「それで、本当にいいの?」
「なにが?」
「付き合ってくれるって話!!」

 軽く問い返して見上げたら、そこにあるのはさっきも見た絶望顔。よく見るな。私のせいか。

「うん。いいよ」
「……なんか軽いな」
「さっきもこんな感じだったじゃない」
「もっと、なんていうんだろう……甘酸っぱいってやつ? あるかと思ったのに」
「予想と違ってがっかりした?」
「それが全然」
「してないんだ?」
「うん」


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