4.



「同じクラスにいるでしょ。くれそうな子が」
「別れたんだってば」
「おばさんに貰ってないの?」
「足りない」
「食いしん坊か」
「君のが足りない」
「……。いやいやいやだって、あげてないし」
「だから、足りない」
「ちょっと待ってよ」

 ずいずいと近づいてきた彼に、思わず体をかばうように両手を前に出したら、ぐいっとその胸の中に引き込まれて抱きしめられた。

「……足りない」

 耳元の呼吸は深くて、声はかすれて鼓膜を優しくひっかく。

「ねえ。……すきってなんだろう」

 ここでか。ここでそんなことをまた聞くのか。
 そんなに切ない声を出すのに、こんなことをしてるのに、まだそんなことを言うのか。
 状況に火照っていく頬とは対照的に、私の頭の中はすうっと冴えていく。

「ちょこ、欲しかったの?」

 また逃げた。こくりと彼は頷く。怒らない彼は心が広い。それに甘えてもう一度後ずさる。

「それなら自分で買えばいいじゃん」
「……」
「今なら売れ残りセールとかあるかもよ?」
「……」
「……。なんで、好きとかなんとか、聞いてくるの?」



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