8.


「解りづらいか。クラスの奴と比べてみろよ。自分でもいい。誰かと合わせようとして、合わなくて、それでも笑ってまだ合わせようとしてる。誰かと一緒にいることって、そういうことかもしれねえけど、そういうことじゃねえよ。俺は、自分のペースも出して初めて成り立つし、決めた軸を流されながらでもしっかり留めるのが『自分がある』って事だと思うし、見苦しくもない、煩くもない群れだと思ってる」


 そこで一呼吸おいて、

「進む進まないも似たようなもんで、それよりも先に何が残るかが俺には大事。何かが残るっていうのは、それだけ自分が留まることができたってわけだろ」

 その言葉に、ぐさりと胸が痛んだ気がした。

「そうですね」

 自分の心の中で、足と手が生えてばたつく。
 それを押さえながら、わたしは少しだけ彼の画用紙を覗くそぶりをした。


「そういえば、お兄さんその絵はどのくらい前から描いてるんですか?」

「あ? ああ、夏休み入ってから。部活の課題なんだよ。婆ちゃん家がここで、毎年ここで描いてる。外は、うるせえから」

「じゃあ期限が……」

「まあな。けど、いくらなんでも期限は守るよ、俺」

 それに少し、二人して笑う。



[ 60/91 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]





↓サーバー広告↓
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -