夜行迷走エイジ


消えた影法師の向こうに
ちぎったノートをばらまく
大通りに面した歩道
行きずるは車の群れ

舞い上がる紙片を眺めて
一言だけ呟く
一度吠えたクラクション
それに掻き消されたけど

「我慢すればいいよ」なんて
口にしたよ
耳にタコなくらい
だけど月日に押されるように
心は潰されて逝くの


攫ってよもう
今すぐでもいいから
こんな日々はもう懲り懲りよ
不満なんてもんじゃないわ
そういうのじゃないの

攫ってよさあ
細切れの紙のように
風よその手を差し延べて頂戴
微笑みかたどっている
口角に騙されないで



熱を失ったコンクリの上
鞄の中身をぶちまける
フェンス越しのグラウンド
響くのは私の音だけ

金具をすり抜ける空気を
耳で感じたまま
立ち尽くした私に
残るのは手の平の爪の跡

「私が弱いだけだよ」ってさ
私はわたしに
笑い飛ばしたの
だけど時間が追うごとに
心が墜落して逝くの
知ラズ知ラズ


攫ってよもう
今すぐでもいいから
こんな人はもう懲り懲りよ
誰かを責めてるわけじゃないわ
そういうのじゃないの

攫ってよほら
あの細切れの紙達は
吹き飛ばしてくれたじゃない
闇よりも重たい
色が交じっちゃった私を



ねえ
聞こえる?
乗り出した身体の奥
見えない明日を
見ようともしないの

分かってる
分かってる
歩いたのは私よ
一秒のその先を
省みないままに
そう
「このまま落ちたら楽よね」



攫ってよもう
今すぐでもいいから
こんな日々はもう懲り懲りよ
不満なんてもんじゃないわ
そういうのじゃないの

攫ってよさあ
細切れの紙のように
風よその手を差し延べて頂戴
微笑みかたどっている
口角に騙されないで

攫ってよもう
今すぐでもいいから
こんな私は懲り懲りよ
何も責められないのは知ってる
知っているんだけど。ねえ。

攫ってよほら
あの細切れの紙達は
吹き飛ばしてくれたじゃない
闇よりも重たい
色が交じっちゃった私を



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