缶珈琲


空気に晒されて
ゆっくりと失いゆく
熱に頬と手を
なすりつけて

馳せた思い出と
褪せた記憶達とを
アスファルトに溶かす
靴音と共に

寂れた夕暮れに映し出した
駆け出し遠ざかる背中には
戻りくる陽など見えないままで
ただまばゆく 鼻奥を刺す


ねえ
振り返らずに
まっすぐ後ろを見てご覧
傷口に零れた涙は花のように
やわらかく咲き乱れている

ねえ
手に残らずに
滑り落ちた時間に聞いてご覧
あの時はもう少し品やかに
後悔も受け止めることができたはず


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