春風―シュンプウ―


真っさらな紙に鉛筆を突き立て
白を黒く塗り潰してくように
荒れ狂い醜くなってゆく

ふっ切れたように高い空を蹴って
胸に刃を当ててじわりと
湧いた血で夢を描いた


「どうかこの世に ぼくを刻めるように」と



生きた証はいらないよと
囁くその唇が
愛している空も空気も君もと
動くようにぼくは走りつづけるだけ

ひたすら耳に染み込ませた
言の葉を掻き消し
ささやかな意志の一欠けら抱き
紡ぎ出して笑え歪んで壊れる前に



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