外道A


…こんなの死にたくもなる。思わず顔を両手で覆い一人およよと泣くが狛枝くんは容赦なかった。
むき出しになった股間にそっと手を伸ばし吐き出した白濁を手で絡め始めたのだ。ガバリ!上半身を起き上がらせ今狛枝くんがしている行動をやめさせようと手を伸ばした。

「ななな、や、やめなよ汚い!」
「汚くなんかないよ。苗木くんの良い匂いがする」
「ッ」

ああ、やっぱ、そうだ。狛枝くんは変態だ。しかもかなりの。青い顔してどうしようと思案している僕に狛枝くんは一つ笑みを落としてから、するりと尻を撫でる。
ぬちゃりとした滑りけのある粘液に文句を言いたくなったがこれは僕が吐き出したもの。白濁。
何も言えずにわたわたとすることしか出来ずシーツをぎゅっと握っていれば、ついに尻の穴の中。男同士ならそこを使うと聞いたことはあったが、まさにそこ。

「はひッ」

ずぶぶぶぶ、と。人差指が中に入ってきた。思ったような痛みはなかった。ただ異物が入ってきたという違和感だけはあり、ぼろぼろと勝手に出てくる涙は止められない。

「ひ、い、嫌だ…狛枝くっ…ま、て」
「大丈夫、僕に任せて」
「…」

何を任せろと。普段希望希望!と言っているくせにこういうときは僕の感情無視するんだね!とても泣きたい気分だよ実際泣いてるけども!
頬から大粒の涙が落ちていきシーツに溶けていくのに狛枝くんは動揺なんてせず笑顔笑顔憎たらしい程の笑顔。
そのまま探るように穴の中を人差指が探っていく感触はとてもじゃないが気分良くない。寧ろ不愉快。
早く終われ、終わってしまえ、心の中で念じていればやがて狛枝くんが何かを発見する。

「あれ、これ」
「ひいあッ!」
「このボタンみたいの。苗木くん、気持ちいい?」
「あッううあッまッふやああッ」
「気持ちいいみたいだね。良かった」

ホッとしたように一息吐く狛枝くんだが、僕はそれどころではない。狛枝くんがある一点に触れた途端ものすごい快楽が大波となってやってきたのだ。
逃げ腰になったがずぶずぶとどんどん中に入ってくる指はそこを捉えて離さない。こりこりと弄るように指先でなで上げる度に出したくもない喘ぎ声が自然と出てきてしまうのだ。
初めての感覚にどうする術もなくびくびくと震え、狛枝くんをそれを嬉しそうな目で眺めてくる。

あぁもうだめなのか。
ぼんやりとする意識で引かぬ快感に身を任せ目をそっと閉じた。


まさに、その瞬間。




「…お前ら何…して…」




突然の第三者の声。


快感に喘ぎながらも視線だけは声の方を向き確認すれば、そこにいたのは。



「あぁ…日向くんじゃないか」


日向、くん。


「ッひな、あううううッひあんッ」
「今良いとこだから出来ればそのまま部屋を出て行って貰えると有難いんだけど」
「てめ、狛枝!お前苗木になにしてんだ!」

この部屋の主、今まで不在だった日向くんがドアのところで呆然と僕たちを見ていた。が、すぐにハッとしたように狛枝くんの胸ぐらを掴んだ。
掴まれている狛枝くんは余裕な笑みでお引き取り願いたいなあと笑ったが日向くんは言うことを聞くわけでもなく激しく怒鳴った。
突然の救世主の到来に僕は嬉しさのあまり小さくガッツポーズをしてしまった。もっと言ってやって日向くん!狛枝くん僕の話なんも聞いてくれないんだよ!

「なにって、ナニだけど」
「何真面目な顔で言ってんだよぶん殴るぞ」
「あぁぶん殴られるのは勘弁かな。日向くん結構力強いし殴られたら流石の僕も痛いよ」
「だったら…」
「まぁ、ちょっと見ててよ」

僕のこの状態を見て本気で怒っている日向くんは少し怖かった。目つきがギラギラとし今まで優しげな顔しか見たことがなかったので少し気まずげに視線を逸らす。
すると狛枝くんはするりと日向くんの手から逃れるとまた中に指を突っ込んだ。ずぶぶぶ、という嫌な音ともに。

「ひはッうああッ、や、やうううッ」
「見て日向くん」
「な、苗木…」
「苗木くん可愛いでしょう?ハァ…たまらないよ。ほら、本人も喜んでるし」

中にある一点を一本、いや一本ではない。何本かの指で転がし弄び時折強く落ちたりしてみて快感を呼び覚ますもんだから冷めてきたと思っていた体がまた熱くなる。
シーツを掴み、勝手に出てくる声を塞ごうとしたがそれすらもかなわないくらいの快感。びりびと足腰が痺れて思考回路すら荒らしていく。
ぐい、とふいに足を掴まれ大きく開かれたと思ったらその真ん中。そそり勃ったそれが日向くんの目前に晒された。
その事実が熱とともにやってきて体が震える。じいっと、日向くんのあの目が、僕のを見ていて、それはとっても、ぶるりと背筋に這うチープな何か。

「ッひゃあみない、れッ、日向くッみな、でえッ!」
「…っ」
「あれ、日向くん膨らんでるよ?」
「…うるせぇ」
「どうする?僕苗木くんが感じている姿を見てるだけで幸福なんだそれこそビルの屋上から飛び降りたいくらいに」
「…」
「だから僕はいれなくもいい。日向くんはどうかな」
「…」

二人は何を言ってるのだろう。ボーッとしすぎてもはや二人の会話が耳に入ってこない。
ただ指先で優しく撫でられるだけで甲高い声と揺れる視界はきっともうそろそろ限界なのを知らせているのだろう。
こんなにも感じやすいものだったのか自分の体は。こんなにも甘ったるい快楽の世界があったのか。知らなかった、なんにも。

「苗木くんは喜んでるんだよ。こんな可愛く喘いで」
「…」
「これが嫌がっているように君は見えるの」
「…だけど、苗木は男だろ…」
「ふうん。日頃どういう目で君が苗木くんを見ていたか、彼に教えてあげたいね」
「…知ってたのか」
「同じ目してたから」
「…」

ああもう早くとにかくこの熱から開放させてくれ。頭の中ぐるぐる、首筋に伝う汗でさえもどかしくてたまらない。今の僕には些細なことでもとんでもない快楽としてやってくるようだ。
自分の腕をシーツの上に滑らすだけでぞくぞくとしたものが這い上がってくるもんだから、これはもう末期。
はくはくと息を宙に吹きかけなんとか理性だけは手放さないようにする。理性があってこの程度、ならば理性を手放してしまったら一体どうなってしまうんだろうか。
自分は自分ではないような感覚にほんの少しの恐怖を感じる反面、いっそのこと理性なんて邪魔なもの手放してしまった方が楽なのかもしれない。どうなのだろう、どうなのかな。

「ひいッあふッ、ひ、はああッあうッ、うッ…?」

ふいに足を高く持ち上げられた。今度は何されるのだろう。訝しげにそちらを向けば、いたのは日向くん。
彼のギラギラとした目が僕を貫いており思わずすくむ。あれ、なんか僕に対して怒ってる?狛枝くんと言い争いしてたんじゃないの?
様々な疑問が浮かんでは消える中で僕は「日向くんっ…」と彼の名前を呼んだ。すると端正な眉を顰ませ同じように「苗木っ」と名前を呼んできた。あぁ、日向くんだ。
狛枝くんと違って日向くんは嫌なことしないだろう。そう安心してへらりと笑いかければ、彼の顔がボッと赤くなる。あれ、日向くん?
同時に先ほどまで感じていた尻の中の違和感がなくなり、快感も止まる。あれ、これはどういうことなのだろうか。
わけが分からず日向くんを見た。あぁ、もしかして狛枝くんを説得して僕を助けてくれたのか。有難い。

「あの、日向くんありが…」
「悪い、苗木」
「とう……え?」

なんで謝るの?だって日向くんは狛枝くんから助けてくれた。そう言葉を紡ぐ前に尻に何か熱くて大きいものをあてがわれる。
思わず、かたまった。これは、一体。なんなのかな日向くん。ギギギ、まるで機会じかけのように顔をあげ彼の表情を伺えばそこには。
例えるなら獲物を獲る時の獣の目。いつもの優しげな目ではなく、僕を獲物としてみているかのような目。
えっと、という戸惑いは口にはならず日向くんがずん!とその熱いものを中に入れてきたことにより大きな悲鳴となってしまった。

「ッ〜〜〜〜〜〜!!!」
「っは、きつ」
「ひ、なた、く」
「待ってろ、すぐ良くしてやる」

良くしてやる?え??混乱が未だ頭の中を支配しているというのに日向くんは腰を強く振り僕の中にねじ込んで引いてを繰り返し、その度にさっきの比ではない快感が全身を覆った。

「ひああッ、うやあ、あ、ううッあうッやあぅッひ、なッ、ふやあ!」
「はっ、はっ、はっ」
「ひなッたあふあッ、んあッ、ひッ、はああ、ああ、うああッ」
「苗木っ…」
「も、やあ、やうううッ!あああ!も、ずるずる、って、ひいッ」
「…」

ぐるぐるぐるぐる。たくさんの熱が自分の体の中で巡っていて。大きくて長いものを突っ込まれ、ずるずると引っこ抜かれるともうたまらない。
喘ぎっぱなしで口が閉じられずよだれがシーツの上にポタリポタリと落ちていき汚していく。
あぁ日向くんのベットが。こんな時だというのにそんなことを気にして一瞬気をとられたとき、ぐい、と髪の毛を引っ張られた。
毛根が引っ張られる痛みに思わず顔を歪めた先にあったのは。

「こま、ふうう!」
「はぁ…」

狛枝くん。彼は僕に唇を合わせ、ぬめりと舌を滑り込ませてきた。逃げるように引いた舌を引っ張り出し絡め呼吸など出来ぬくらいの深いキス。

「〜〜〜ッ、ふ、う、あ、ッ」

こんな状態でどうやって息を吸えというのか。じたばたと暴れたが日向くんが容赦なくがつがつと腰を振るものだから快感は絶えない。
びくびくびく、腰が痙攣し足も震える。シーツを蹴り、シーツを握り、舌先をちゅうと吸われ、上も下も逃げられぬ快感。
頭はぼうとしなんだかもうこれは、ああ、びくびく、あ、あ、あ、あっ。


「ひ、は、ふぅッ」


ぞくぞくぞく。あぁ、もうどうにでもな、れ、んああッ…。













「苗木!わ、悪かった!」


事後。もう盛大に何発かイきダウンした僕は日向くんの部屋で死んでいた。散々ヤられまくった腰はもう鈍い痛みが突き刺さる。
立つことすら出来ない僕の姿に日向くんは土下座をしてきて腰を何度も撫でてくるのだが、痛い、痛い、そしてほんのちょっとの痺れ。
本人に悪意はないのだろうけどまだ敏感な僕の体はそれだけでびくびくと揺れてしまう。

「これはやりすぎだと思うよ、日向くん」

そんな僕らを見て言うのが、そもそもの元凶狛枝くん。彼は日向くんを非難するような視線と言葉を投げかけまるで自分は悪くないとでもいいたげだ。

「ふざけるなよ狛枝…元はといえばお前が」
「本番はしてないから。大切な苗木くんの純潔を僕なんかが奪ったら申し訳ないよ。それなのに日向くんといったら…」
「てめえ…」

ふるふると拳を震わせる日向くん。ああもうこの疲れた身に二人の言い争いは響く。それに僕はというと最初の方の怒りはもはや薄れていた。
それよりも羞恥で死んでしまいたいそんな気持ちでいっぱいいっぱい。はぁ、とため息をつきながら小声で呟く。

「すごかった…」

これは全てを総合して出てきた言葉だ。なんかもう色々、すごかった。それを素直に言葉にしただけ。
なのにそれだけで二人は動きを止めまじまじと僕のことを見てきた。一体なんなのだろうか。戸惑い「な、なに?」と聞けば、日向くんは顔を少し赤くしながら頬をかく。
狛枝くんもやけに嬉しそうな顔でにっこにこしてにじり寄ってくる。嫌な予感しかしない。

「あー…その、苗木」
「うん」
「…気に入った、のか?」
「…」
「気に入ったに決まってるよね。あんなに乱れてたんだもの!ああ可愛かった!これで僕は明日に希望を持って生きていけるよ!ありがとう苗木くん!」
「…」
「そ、そうか…。なら、次は…もっと頑張る」
「…」


は、は、は。この二人、なにいってるわけ?


話についていけない僕を差し置いて二人は「今度は写真とろうか」「小泉に貰ったカメラがある」などという話をしだしたから、もう、もう、もう。
日向くんには悪いが心の底から思ってしまった。一回くらい、死んできて、くれない、かな。





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輪廻様リクエストありがとうございました!日向部屋シチュ生かしきれてないウワアア!!

輪廻様のみお持ち帰り可能でございます!くそ、いつかリベンジさせてくださいまし…!



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