耽美なお目覚め




カーテンがかかった暗い室内。まだ空に日が昇っておらず深夜とも呼べる時間帯に、僕はふと目が覚めた。
何故目が覚めたのか分からない。けれど何か違和感を感じ自然と意識が浮上していた。
起きたてでぼんやりとする頭。その頭で天井をぼーと見た後、尿意が来るわけでもないのでもう一度眠りにつこうと目を閉じた。そのとき。

ぞくり、背筋に快感が走った。

「は、ふ、……え?」
「あ、苗木くんおはよう」

え、え、え。すぐそばで聞こえた声は聞き覚えのあるもの。驚いて上半身を起こそうとしたが、体をひねればずくんと鈍い快感が襲ってくる。
なんだこれは、意味が分からなかったが段々に目が慣れてきて部屋の様子も分かってきた。

まず、僕はズボンを脱がされていた。履いていたと思われるズボンは床の上に綺麗にたたまれ、素足の間に声の主狛枝くんがいる。
適当に着ていたTシャツもめくられほとんど肌が露になっており、非常に寒々しい格好をしていた。

そして一番目が止まった場所といえば。

「…狛枝くん、何してるの」

僕に何かが、入っている。そのナニが、たぶんこれは質量や狛枝くんの位置的にも、恐らくアレ。

「僕だってするつもりなかったんだよ」

悪びれず苦笑いといった風に言ってみせる狛枝くんだが実際とんでもないことが今起きている。
依然として信じられずガン見するそこには、言いたくもないが僕の、その、尻というかケツというか。
間違いなくその本来受け入れるべきではないところに、狛枝くんのアレがいれられている。
…勿論動揺する。

「ちょ、なななな、えっ、こま、狛枝くん!?」
「なにかな苗木くん」
「なにかなじゃないよ!君何してるの!」

狛枝くんの体を蹴り上げる。乱暴なやり方だがこの意味の分からない状況に黙ってなどいられない。
しかし狛枝くんもあの細身の割に力が強く、蹴ったくらいでどきはしなかった。寧ろ離れまいと腰を押し付けてきて、ずぶずぶという嫌な効果音が聞こえてきて泣きそうになる。
太くはりのある棒、じくじくと熱い長いもの、こんなもの目覚め一発入っていたら混乱しかないのに狛枝くんといったらもう。
爽やかな笑顔で腰をしっかり掴み「あのね」と話し出す。

「最初はね、寝顔を見るだけのつもりだったんだ」
「ね、ねがお?」
「そう。苗木くんの眠りを妨げるなんて真似僕には出来ないし、起こさないよう身守るだけのつもりだったんだ」
「…で」
「そうだね。結果としてこうなっちゃったんだけど、まあ、僕頑張るよ」
「何を馬鹿なこ、とッ、ああッ!」

結局何がどうしてこうなったのかの説明になっていない。文句を言おうと開いた口も腰を動かされては喘ぎ声になってしまう。ちくしょう。

「あっ、ふああッんッひいッちょ、まっ、って!」
「苗木くんは奥が好きなの?奥をごつごつやられるのが好きなんだね?」
「ひいッ、んなの、しら、なあッ」
「好きだと思うよ。だって、ほら」

ずん、とひときわ奥に突き上げられ背中を海老反りにし甲高い声をあげれば、股の間にそそり立つものは正直そうに涙を零している。
先端からとろりとろりと滴り落ちるそれを狛枝くんは左手で掴めば、尿道に爪をがりりと立てた。ビクンビクン!同時に快感も倍増し腰が揺れる。

「はッ、はあッ」
「可愛い」

僕に視線を向けるわけでもなく、そそり立つそれに言う狛枝くん。君は何に話しかけているんだ。僕に言え。いや僕に言うような言葉でもないけど。
というかほんと待ってくれ。狛枝くんとこうして愛するという行為は正直嫌いではないが今はまずい。今はだめだ。

「あの、僕」
「ん?」
「明日、っていうかもう今日かな。ああ時間分からないや。とにかく霧切さんが迎えに来るから、その」
「うん」
「あんま腰は痛めたくないというか」
「あぁそうなんだ」

そう、霧切さん。彼女の前で腰をおさえヘロヘロする姿を見せたくない。彼女は心配性だしもし弱っている僕の姿を見れば心配するだろう。
それだけは避けたいという気持ちで狛枝くんに伝えれば、彼は笑顔で頷く。そう、笑顔。
だけどよく見てみると、目が慣れたとはいえ暗闇のためそこまで表情は読み取れないが、なんだか。

(…あ、れ)

不機嫌、というか、あまり気分が良さそうではない。

口元の笑みも、目元の緩みも、なんだか怖い。ぞわりと嫌な予感を感じ「こまえだくん」と彼の名前を呼ぼうと少し上半身をあげれば。

「そうだよね」
「え?」
「僕みたいなゴミムシより霧切さんの方が」
「…や、あの」
「…分かってたよ」

寂しそうな顔で言う狛枝くん。これはまずい、誤解されたかもしれない。確かに霧切さんは大切な存在だし仕事のことでもお世話になっている。
けれど狛枝くんと比べるべきものではない。自分にとって苗木くんと狛枝くんは大切なものだし捨てられないものだ。
悲しそうな狛枝くんの顔を見ていられず慌てて訂正をしようと口を開きかけたその時。

狛枝くんは突如腰の動きを再開させた。下から上に向かって突き上げるように何度も奥をえぐり始めたのだ。

「っはァま、えッらぁッ」
「…なんてね」
「ひい、ひはあッふやあッ、まッ、ごつごつ、しちゃッ」
「霧切さんにバレたら厄介なことになるしね。苗木くんもお仕事があるだろうし」
「ああッはあッんやああ、!こまえだ、くッ」
「…だけどね」
「ふあ〜〜〜〜ッ!」

パアン!最後前立腺をなぞって滑り込ませ中に入ってくる感触に背筋はぶるるると震え、息も絶え絶えになりながらびゅるるりと液体を飛ばす。つまりイった。
はふはふと呼吸を整えぼやっとする頭を冷やそうとするが、中に入っている狛枝くんのものはまだ元気でどくどくと脈打っている。

「僕は苗木くんのこと大好きだから。君が僕を嫌ったとしても僕は君を愛し続ける」

ちゅっちゅっ、と頬にキスの雨を降らす狛枝くん。イった余韻で恥ずかしがる余裕もなく受け入れていればやがてぺろりと鎖骨辺りを舐めた。

「ん、汗の味」
「…舐めないでよ」
「美味しいよ」

幸せそうな顔をして言う狛枝くんは僕を愛することで精一杯のようで、僕からの返事など期待していないようだった。
ぺろぺろと肌を舐めてきて犬のよう。言葉などなくても十分幸福そうな彼に一つため息をつき、呟く。

「…僕だって」
「どうしたの苗木くん」
「…な、なんでもないよ!」
「?」

ああ、くそ。こういう時素直な二文字というのは出てこないものだ。
ぼやける視界にだんだんと引いていく快楽の波、訪れるは気だるげな眠気。
このままシーツの海に溶けて消え去ってしまえたらいいのに、とは思うものの。忘れてはいない自身の中。元気いっぱいにパンパンに膨れているそれの存在を忘れられたどれだけ幸せか。

「ねえ狛枝くん」
「なあに」
「いつまでいれたままなの」
「もうちょっとしたら動かす」
「…」

結局動かすのか。まあそうだろうな。狛枝くんはまだイってないし。僕としても自分だけ気持ちいいで終わる形は嫌だ。
赤ん坊のようにすりすりと肌に擦り寄ってくる狛枝くんを可愛らしく思いながら彼の髪の毛に中に手を突っんだ。猫みたい。笑える。







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