防ぎようないと僕は



かりかりかり、と喉元を掻く。暑い、暑い、渇く、疼く、熱が、篭もる。

皮膚の下でなにか生き物が這うかのような感覚が常に付き纏い、体中のこの熱に酔わされ意識さえ朧げ。
このままだとまずい。それは理解しているつもりなのだが、体が言うことを聞いてくれない。

はぁ、と熱が篭った息を吐き唇を噛み締めた。血が滲む。しかしこうすることで自分の意識がまるごと持っていかれるのは防いだ。

「あは、苗木ぃ可愛くなってる」

突然頬を冷たい指先がなぞった。温度の差そして瞬間走る体中の電流にビクビクと体を揺らしながら恐る恐る背後を見た。



「…えの、しまくん」



思った通り、彼がそこにいた。愉快そうに口元を歪め、見下ろしている。

「暑い?あ、発汗してる。効いてるんだ」
「…えのしまくん」
「なあに、苗木」

さわさわと頬の輪郭を江ノ島くんの指先が弄ぶ。するり、耳まで撫であげ、そして喉元へとゆっくり戻っていく。
何回かそれを繰り返し、くすぐったさと何故か背筋がゾワゾワし中心に集まっていく熱。おかしい、なんで撫でられるだけでここまで熱がこもっていくのか。
沈みそうになる意識の中考えれば、江ノ島くんは僕の思ったことなどお見通しかのようにくすりと笑った。

「なあんもわかってないような顔して、あれ、もしかして分かんない?あっ、あんた寝てたもんね。あははごめん勝手にやらせていただきまーしたー」
「なに、を」
「いやそんな大したことじゃないんだけどね?大したことでもないから別に教えてないしね?
というか俺もうだめ、こんな素敵シチュに激ってもうやばいハァハァしてるこれ皆に見せてやりたい」

的を得ぬ江ノ島くんの言葉。しかし、この異常な状況と体の異常に気づかぬ程馬鹿でもない。おそらく、一服盛られたのだろう。
やってしまった、不覚。自慢じゃないが自分は中々に疎い性格だと分かっているしそこは気をつけなければと思っていたのだが。今更後悔しても後の祭り。
うまく動かぬ体に湧き上がる無限の熱。抗うことなど難しい。

「俺としてはもっとこの状態の苗木を眺めていたい気もするけどぉーうーん」
「ッあ」
「見てるだけは飽きちゃった」

…飽き性と名高い彼だ。そんな気はしていたが、と考えられたのはそこまでで。スルリと綺麗な指先が次のターゲットとして選んだのはズボンの方。

「う、ぁ」

ズボンの上から指先で押され、ズクンと体の奥底から快感が浮かぶ。思わず漏らしてしまった声に気付いてすぐに口元に手を運ぼうとしたが、その前に江ノ島くんに絡め取られる。

「やっだ苗木もう勃ってる!変態!邪魔なお手は結んじゃおー!」
「ま、まって」
「待たない」

皮製のベルトでぎゅっと結ばれた両腕。腕に這う江ノ島くんの指先にさえ得たくもない快感を得て、目が潤む。

「まあ勃ってるのはクスリのせいなんだろうけど…」

ぼそりと呟かれながらズボンのジッパーをじぃぃ、とゆっくり開けられ段々に中へと忍び込まされていく指先に焦って声を荒げた。
が、江ノ島くんはそんなこと気にしないかのようにパンツの上からつうとなで上げた。じっとりと湿っていたのが自分でも分かって泣きそうになる。

「あ、う、う、」
「期待しちゃった?ねえねえ期待しちゃった?よろしい俺様がその期待に応えてやろう」
「期待してなうあッ、んッあ」

パンツの上からそれの輪郭をなぞり、根元から先端にかけて何度も往復する。
その動きはやがて速さを増していき、パンツの上からだというのに先走りでそれの形はハッキリ分かるようになっていた。

「やう、うあッは、は、あ、ま、てぇ」
「あれ、これもしかしてイっちゃう?直に触らずにイっちゃう?」
「うあ、だ、いやいや、やめ、アッ、う」

じゅぶじゅぶと中から音がし始める。このクスリ、中々強いものだろう。
呼吸がうまくできない。背筋がゾワゾワする。体中の神経が敏感になり、額に流れる汗にさえ体が反応する。
江ノ島くんが耳元で囁くだけでじゅわりと汁が滲み吐息が漏れ、自分の体が自分のものではないような気さえしてくる。

はふはふと荒い呼吸を繰り返し耐え切れず頬に生理的な涙が伝えば、江ノ島くんはそれをペロリと舐めとった。

「苗木の涙、絶望的に甘いね」

俺好みの味じゃないや、そうぼやきながらも機嫌良さそうに瞼に舌を這わす江ノ島くんは、美味しそうに涙を飲み込んでいる。
涙なんて美味しいものではないだろう。そんなこと言われたって、反論しようと口を開いたが出てくるのは喘ぎ声だけ。

「ひゃ、は、ああ、うッあ、ああッ」

先走りのせいでべたりと張り付いた感触が気持ち悪い。
ふにふにと玉を転がし時には優しく、時には荒々しく、先端の穴に爪を食い込ませがりがりと刺激する。
綺麗に手入れされた爪先をそんなところに、江ノ島くんに対してそんなことを思ってしまった僕は喘ぎながらも途切れ途切れで言葉を発しようとした。

「えの、しアッう、くッ、うやッ、ん!」
「パンツ越しじゃなく直に触ってください?ばっかやろうそこはもっとエロゲみたいな台詞吐いてみろそしたら爆笑してやってやるのに」
「そ、じゃなッ、うあッ、あ、あ、」
「直じゃなくても全然満足そう流石苗木偉い偉い」
「ああッん!あッ、やッもう、うあ、あああ、あうぅ!う、あ!」


江ノ島くんは話など聞いちゃくれやしなかった。激しく手をスライディング、そしてパンツを少しめくらせ既に勃起したそれの尿道に爪をがりりと立てた。


その瞬間頭の中が真っ白になり手足がビクビクと痙攣した。
瞬間的快感に仰け反り掠れた声が飛び出てきてびゅるるる、と白濁が吹き出る。




「あ、あ、あッうあーッ…!」




イ、った。




どっと押し寄せる倦怠感に身を任せ、首筋に汗が伝う。

視界の隅に白濁が床に飛び散っているのが目に入り、思わず視線を逸らす。
だが江ノ島くんはそれを許さず自身の手についた白濁を僕の目の前で舐めとった。

「あ、これは好みの味」

またしても涙を舐めとったときと変わらぬ表情で言う江ノ島くんは、僕のズボンを脱がしにかかってきた。
これはもう、ここまできたらヤられるのだろうか。まだクスリが抜けきっていないようでじくじくとまた中心に集まり始め、気だるさにため息を一つついてから目を閉じた。
江ノ島くんと関わるとロクなことがない。そんなことは知っている。知っていた。知っていたが。

「…つ、かれた」

彼は唐突にアクションを起こす。そのどこに隠されたかも分からぬ罠に、気をつけるなんてこと出来るのだろうか。

ぼんやりとする思考の中で考えたが江ノ島くんの大きく腫れ上がったそれを見てまた泣きたくなってきた。明日、絶対腰痛い。






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