愛に忠実



「ねえ苗木くん、日向くんにお菓子貰ったんだけど良かったら」
「え」

ガチャリ。日向くんから貰ったお菓子を持って苗木くんの部屋へと入れば、そこには予想外の光景が広がっていて思わずかたまる。

あれちょっと苗木くんそれあれあれあれあれあれ。

「……苗木くん、それ」
「うわあ!な、な、な、」
「…」
「み、みた?」
「うん」
「…」

はっきり見た。見てしまった。苗木くんが手に握っていたものを。ぶるぶると振動しているのもハッキリ見てしまったし、そういう形をしているのも見てしまった。

今慌てて自身の背後へと隠したが今更のこと。

「なんで苗木くんがバイブなんてもってるの?」

驚きながらも疑問に思うので素直に聞けば、苗木くんはカアアアと顔を赤くさせた。可愛い。

「ちが、ちがうんだよ」
「違うってなにが?」
「僕が買ったんじゃない!む、無理やり渡されたんだ!」
「誰に?」
「葉隠くんに!」

葉隠くん、あああの占いの人か。直ぐ様頭が爆発したかのようなヘアーをした人物を思い出しふうんと適当に相槌を打つ。
苗木くんは思ったより僕の反応を貰えなくて戸惑ったように上目遣いでこちらを伺う。
ねえ背中でバイブまだブルブルいってるんだけど。気付いてないのかな。それとも僕に見つかったから動揺して忘れているのかな。

勿論バイブというものは肩こりとかそういうものではなく、しっかりとした性的目的で作られたものだ。形から見て明らか。

その卑猥なものと、皆の希望である苗木くんの組み合わせ……悪くない。寧ろ煽られた。

「…ねえ苗木くん」
「な、なに?」
「そのバイブ貸して?」

きょとんとしながら苗木くんはバイブを僕に渡す。ビヨンビヨンと卑猥な動きを続けるバイブ。じいと眺めていれば苗木くんが気まずげに視線を逸らすのが分かった。

とりあえず黙ってそのバイブを苗木くんの股間部にあててみた。

「うわあ!」

色気のへったくれもない声。それと共にバッシーン!と頬に衝撃が。

「あ、あ!ごごごめん狛枝くん、つい」
「あはは、大丈夫だよ。苗木くん今のパンチ良いね、さすが超高校級の希望だ!」
「や、それ関係ない…」

口ごもる苗木くんのパンチは本当に中々のものだった。流石絶望的状況下を生き抜いてきた苗木くんだ。素晴らしい。うん。
にこやかに笑いながら苗木くんの手を握る。苗木くんもよく分かっていないだろうけど、へらりと笑った。

「苗木くん」
「なにかな狛枝くん」
「ちょっとやってみたいこ」
「却下」
「…まだ何も言ってないんだけどなあ」
「いやそれくらい察して、あれ、狛枝くんこの手はなにかな、あれ、ねえ、狛枝く、ちょっとその紐なにどこから、ねえ狛枝くん、こまえ、うわあ!」







「あのね、誤解して欲しくないから一言言うけど」
「あっ、ひゃあ、ンッ」
「僕は君が嫌がることはしたくないんだ。こうして心が通じ合っただけでも幸せだと思うし、寧ろおこがましいくらいだと思うんだ」
「じゃ、やめ、あああっふやあ」
「僕みたいなクズが苗木くんと愛の契りだなんて…幸せすぎて何回死んだらいいんだろう!」
「も、ぶるぶる、いやあっ」
「だけど苗木くん、無理やりとか好きだよね?気持ちいいの、大好きだもんね」
「ちっ、ちが、あッ、あう!」
「こんなクズだけど、苗木くんに尽くしたい。そう思うのも、だめかなあ…」


ブルブルブル!グヴィングヴィン!激しい動きで苗木くんの中をかき混ぜるバイブから逃れようと苗木くんの指先がカリカリとシーツをひっかく。
ビクンビクン!何度体が痙攣しペニスから精子を飛ばそうとも終わらぬ快感に喘ぐしか術はない。
駆け上がる快感にシーツの海を何度も蹴りあげ、涙や涎でくしゃくしゃになっていくのを眺める僕に苗木くんは恨めしさと快感を交えた声音で呟いた。



「こまえ、だくんッにも、気持ちよくなって、ほ、ああッ、僕だけ、なん、ッてぇ、いやッ、だ、ふやッ挿れェ、てッ」








直ぐ様鼻を抑える。

つう、と鼻から垂れる液体と激しく鳴り出す心臓に、死にそうになりながらも直ぐ様バイブを引っこ抜いた。





「ふやあッ」



そのとき抜き方が雑になってしまったため苗木くんの細い体が反射で跳ね上がる。

なんだ、苗木くんはもう、どれだけ僕のツボを心得ているのだろう。

この幸せに泣きそうになりながらも欲望だけは素直で、自身の息子がドクリと鼓動したのを感じた。








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