似た者同士



今後ろにいる人は男ではない。男なんかではないんだ。そう思い込むようにしている。

「っ、ひ、っ…!」

バックの態勢で尻の中を熱いもので抉られる。ぽっちりと腫れ上がった前立腺を何度も亀頭でゴリゴリと擦られてしまえばそそり立つ性器からは大量の先走り。
気持ちいい、認めたくはないが視界には正直に反応を示している性器の姿が見えるものだからなんだか泣きたくなる。
自分は今男に尻を掘られ喘いでいるのだ、どうしてもそのことが頭から離れず素直にこの快楽に溺れるわけにはいかなかった。
ひ弱で体の線が細いとはいえ自分も男、捨てきれぬプライドというものがある。男が女のように扱われるなど屈辱以外の何ものでもないしましてやこんなあわれもない姿を晒すだなんて。
幸い狛枝くんには背中を向けているためこの蕩けきった顔は見えないだろう。それだけが救いであった。
油断すれば飛び出してしまいそうになる甲高い声を堪えるため、枕を噛み締めていれば背後で狛枝くんが不満そうな声をあげた。

「どうして声を堪えるの?」
「…ふ、べつ、……に…」
「…」

こんな女みたいな声、恥ずかしくて聞かせたくない。こみ上げてくるものをぐっと堪え、必死に狛枝くんに聞こえないようにした。
涎がだらだらと流れ枕にしみこむことなど気にせずただ夢中になって堪えることに専念していたが、その背後、狛枝くん。
彼がすっと目を細め何かを思案しながら僕を見ていることなど気がつきもしなかった。

「…」
「ッ、…う、ッ…」
「…」

狛枝くんのことは好きでこの行為も同意の上。しかし恋心と性欲とはまた違う路線の上にある。ましてや相手は男。同性なのだ。
こんな声聞かせても気分が悪くなるだけだろうし、彼に不快な思いもさせたくない。苦しいが僕がここで耐えればいいだけの話。
狛枝くんの大きな性器がずずず…と引かれ、奥にずん!っと突っ込まれる衝撃には流石に声を出しそうになってしまったが、それでも枕を強く噛み締めることで堪えることが出来た。
指先に力が入り常に油断が許されない状況だが、堪えられないことはなさそうである。なんとなく安堵して目元を緩めた瞬間、狛枝くんの手が僕の腰をぐっと掴む。
そのままぐるっと回転させられ、僕は枕から無理やり顔を離された。
仰向けで必然的に狛枝くんの顔が見えるような態勢になったわけだが、彼の性器が入ったまま回転させられたのでつい「ひうあッ!」という甲高い声が喉から飛び出てくる。

「は、え、え?」
「うん。やっぱりバックよりこっちの方がいいね。苗木くんの顔見れるし」
「や、ちょっと、僕この姿勢は…んあうッ!」

いきなりこの人何をしているの。さっきまで枕に顔を埋めていたはずなのに、今は狛枝くんが僕の体を回転させたせいで顔が向き合う形となってしまった。
快感でどうにかなってしまいそうな顔もこの姿勢では見られてしまうわけだから僕としては羞恥極まりない姿勢である。
抵抗するように直ぐ様体の向きを変えようとしたが、その前に狛枝くんがゆったりと腰を揺らし始めた。どくん、快感の波が再びやってくる。

「あ、う、っは」
「苗木くん…もっと声聞かせて」
「や、やだ…よ、っひ、あ!」

こんな甲高い声、気持ち悪いだろう。この声を抑えるべく口元に手を持っていこうとしたが、それを見た狛枝くんは僕の両手を頭上でひとまとめにする。

「はなッ、はなし、ひいああン!!」
「君の声が聞きたいんだ。可愛い顔も見せて、ねぇ…」
「かわ、く、なッ、からあ…やうううッ」

どうしよう、どうしようどうしようどうしよう。今狛枝くんは僕の顔を見つめている。瞬きもせず興奮したかのような濡れた視線で僕の全てを見つめている。
食い入るようなその目で快楽に歪む自身の顔を見られているのかと思うととても恥ずかしく、カアアアと顔面に熱が篭っていくのが自身でも分かった。
そんな、僕の顔なんて見たって、男が快感に喘いでる姿なんて、見ても絶対得しない。

「ッはなして!ほんと、そ、そんな見ないで…!」

たまらない羞恥心に突き動かされるまま僕は足をばたつかせひたすら暴れた。多少乱暴なことをしてでも、この変な顔を見られるのは本当に嫌だったのだ。
しかしそんな僕を狛枝くんは焦った様子もなく暫く見つめており、数秒経った頃腰をゆらりと揺らす。奥に滑り込ませるような、たった一つの動き。
それだけで腰が震えてしまう程の快感が僕を襲い「っひ」と喉から引きついった悲鳴を出してしまった。途端に狛枝くんの嬉々とした顔。

「あぁ、やっぱり可愛い」
「だ、だからあうううッ、ひ、い!ひゃ、あうッ」
「顔真っ赤にして、目も潤んじゃって、涎垂れ流して、ほんと気持ちよさそう」
「や、やああうううッ、うううッンン、あぅ、う、っは」

ずんずんずん、何度も狛枝くんは腰を振り快感で僕をとろけさせようとする。手で隠すことも出来ない。喉から飛び出してくる甲高い声を止めるものなどもう何もない。
こんな顔と声、見せたくもないし聞かせたくもないのに、何が楽しくてこんなことをするのだろう。涙でぼやける視界にうつる狛枝くんは本当に嬉しそうで目元が赤く染まっている。
僕は男であるし女らしい要素もないのだ、体つきも細いとはいえ女の柔らかさとは程遠い。
そんなものを見てもつまらないはずなのに、と思っていると狛枝くんが僕の乳輪の辺りに舌を這わし始めた。ぬるり、ぬるり、くるくると回転する舌先がまた快楽を呼び起こす。

「あ、あ、あ、っは、あ、だめ、も、や、あ、うううッひ、いッ」

ぞ、ぞ、ぞ。狛枝くんの滑り気のある舌が乳輪を舐めまわす。熱い吐息も乳首に降りかかり、そこに狛枝くんがいるのだと意識せざるおえない。
下半身に集まっていく熱は早く放出の時を待っているのか小さな穴がぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返す。
イってしまいそうだ。でも今イってしまったら僕は絶対変な顔を狛枝くんに見せることになるだろう。
それが耐えられなくて必死にイきそうになる感覚を耐えた。我慢だ、イくな自分。頼むから大人しくなってくれ息子よ。
小さく呟かれた言葉は狛枝くんには届かず、彼は乳輪を舐めていた舌先を段々に乳首へと近付けさせていく。ゆっくり時間をかけて。
心臓が嫌に煩く感じる程無音な空間に僕と狛枝くんの荒い息だけが響き、にゅちょりと粘着質な音も響く。どきどき、どきどき。

「こま、え、ふああん!」

ちゅううううう!狛枝くんは舌先を乳首に触れた瞬間口内で吸い上げてきた。
乳首が生ぬるい温度の中に引っ張られる感覚にシーツをつい蹴り上げれば、狛枝くんは上目使いで僕の様子を盗み見る。
そんなことも気付かぬまま僕は快感に喘ぎ続けた。

「っひ、ら、やらうううッ、あうッ!吸わッ、な、で、えッ」

吸いながら狛枝くんは腰を左右に動かす。まるで中を広げるかのような動きに首を何度も振る。逃げることの出来ぬ快感に何度も何度も何度も。
もうそろそろ限界かもしれない。視界が白くなり始めたのを感じながら僕ははふはふと息を吐き、彼の名前を呼んだ。

「こま、こまッ、だ、くッ、あう、…ひ、いッ」
「なに苗木くん」
「も、や、イっちゃ、んんんあぅ、ぅ…う、っひ、っは」
「そっか。うん、イっていいよ。ちゃんと見てるから」

そう言って乳首から顔を離し僕の顔をガン見する狛枝くん。ようやく開放された乳首がじんじんと痺れたが、そんなことよりも彼に見つめられたままイくなんて真似絶対にしたくなかった。
イく瞬間頭の中が真っ白になって自身の顔がひどく歪むことは自分でも分かっていた。その顔がどれだけ醜いか、想像するだけで今すぐ彼の視線から逃げたくなる。
そんな醜い顔狛枝くんには見せたくない、愛想を尽かされたらどうしよう、あぁ、死にたくなってきた。

「見な、うあッ…あぅ、ンッひはぁッ、やあうううう〜〜〜〜〜〜ッ」
「ッ、う」

そんな気持ちとは裏腹に体は素直に限界を迎えた。尿道から白い粘り気のある液体が飛び出て自身の腹や狛枝くんを染めていき、思考までも奪っていく感覚に体をびくびくと痙攣させる。
気持ちいい、信じられないくらい気持ちいい。体の中に熱いものが満たされていく感じも今の僕には快感にしかならなくて、あ、あ、あ、と震える声を漏らした。
狛枝くんは最後まで快感に沈んだ僕の顔を至近距離で眺めており、イって疲れ果てた僕に向かった彼は至極幸せそうな声音で呟いた。

「可愛い…!」
「…可愛いくない、もん」
「可愛いよ!ほんと、なんでそんなに可愛いの。ありえない、やばいよ。声も可愛かった、あぁ、どうしよう」
「…僕の甲高い声なんて、ん、気持ち悪いだけ、でしょ」
「そんなことないよ!君の声を聞くだけで僕はもう、僕は」

イったせいで気だるさが全身を襲い、狛枝くんにイき顔を見られてしまったショックに少し落ち込んでいたが、すぐに体内にある脈打つものに気がついた。
え、と目を丸くしたがすぐにそれがなんなのか理解した。狛枝くんの、性器。彼もイったはずなのにもう固くなり始め僕の中で主張を繰り返している。
なんでもう元気になっているわけ。信じられない気持ちでいっぱいになる。しかし狛枝くんはへらりと幸せそうな笑みと共に再び言う。

「だから、苗木くんが可愛すぎるのがいけないんだってば」

君のせいだよ。囁くように言われ僕は瞬きを何度か繰り返し呆然とする中「…狛枝くん、趣味悪…」と思わず呟いてしまった。
しかし彼はそんなこと気にする様子もなく僕の目元にちゅっとキスを落としゆるりと再び腰を振り始める。
僕なんかに狛枝くんは興奮してくれたんだ、本当に、嘘じゃなく、体が反応しちゃって。
再度襲い来る快感に震えながら少しばかり嬉しい気持ちになり、僕はいつの間にか解放された両腕を彼の背中に回した。
僕なんかで欲情するだなんて、彼も大概変わり者である。
絶対男より女の子の方が良いに決まってるのに、と自分にも言えることだと気づき苦笑する。僕も大概趣味が悪い。女の子より男を選ぶだなんて。

「ッちょ、やだ顔近い!」
「苗木くんの感じてる顔が見たいんだ」
「ッ」

でも結局のところ、僕って狛枝くんのこと好きなんだなあ。プライドとか、理性とか、そんなの残していても彼が望むのならば許してしまえそうで。
唇を噛み締めようとしたが彼の言葉と真剣な眼差しに恐る恐る素直に声を出してみる。
女じゃない男の声。それなのに狛枝くんは欲望剥き出しのギラギラとした目で僕を見つめてくるものだから、一体僕のこんな声のどこがいいのか悩む。
あ、これまた僕にも言えることなのかな、うーん似た者同士ってこと?あぁ、苦笑。



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