ただの愛さ




僕と狛枝くんは兄弟だ。しっかり血も繋がっている。
なのにどうして苗字が違うの?なんておなじみの質問は耳にタコが出来る程聞き飽きたことだ。
そういうのは大抵複雑な家庭事情というものがあるのだから察して貰いたい。まぁ今更そのことに関し思うことも感じることもないのだからいいのだけれども。うん。


そして最近聞かれるのは「何で兄弟なのに苗字呼びなの?」まぁ不思議に思うだろう。
名前ならまだしも苗字で呼び合う兄弟なんてそうそういないだろうし、仲も悪くない僕らのことだからなおさらのこと。
それに関しては複雑な家庭事情のせいではなく、僕たちが勝手に壁と保険をかけただけの話。



「苗木くん、いそべときなこ、どっちがいい?」



それでも僕らはなんだかんだで上手くやっていけてるのだからまだ選択はしなくていいのだろう。
二年前のあの日の過ちのせいで全てが崩れた時のことを思い出しながら僕はのろのろとベットから下りる。未来のことなんていくら考えたところで分からぬこと。
なるようになればいい、自身が選ぶことならば僕はそれを運命だと信じたいんだ。なんて、かっこいいこと言ってみたりして。
だからといってまた全てを崩す気はないために僕たちは壁を作る。冬の寒さのせいで壊死しそうになる足先同士を摺り合わせ、僕は狛枝くんに微笑みかけた。




「きなこがいいな」




好きなだけじゃだめなんだ。



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