禁じ手




苗木くんは小さくなった。いや、僕が大きくなったのか。
その背中を腕の中にぎゅっと閉じ込めその小ささを実感していると苗木くんが「くすぐったいよ」と身をよじった。
ごめんね、即座に謝りの言葉を呟いたが離す気は毛頭ないのでそのまま背中にひっつき続ける。あったかい。


「苗木くん」
「なあに」
「今日一緒に寝よっか」


首筋に頭を沈め弟の臭いを充分に味わっていると、苗木くんはやはりくすぐったいのか何回か僕の腕から逃れようとする。
その動きに腕の力をなおさら強めた。絶対離さないよ。目の前できっと弟は困った顔をしているだろうがそんなこと気にせず問いの返事を待つと、苗木くんの戸惑いを含めた声音が聞こえた。


「今日?」
「うん」
「えー」
「嫌?」
「狭いよ」
「狭くない」
「僕も狛枝くんも大きくなったんだ。狭いよ」


だからやめよう、おどおどとした言い方だがはっきりそう言い切った苗木くんに僕は非常にツマラナイ気分になる。
久々の再開、昔のように一緒の布団に寝たっていいじゃないか。苗木くんのケチ。ほんのりとしたムカつきを感じ、僕はその衝動のまま首筋に歯を立てた。ガリ。


「ッ」


軽く噛んだとはいえやはりそれなりに痛みもあるだろう。ビクリと肩を震わせ吐息を漏らす苗木くんに満足感が顔を出し始め、更に舌先を首に這わす。
ぬるりとした粘液をまとった舌はよく滑り苗木くんの首筋から肩までまんべんなく舐めることが出来た。あぁ、甘い。
しかし苗木くんは流石にそれは耐え切れないと思ったのか、片腕でしっかりと僕の腕を掴んだ。
引き剥がそうとするでもなくただ力を込め握るその手。なに?と聞けば苗木くんは首だけを回しこちらに視線を向け、一言。




「お兄ちゃん」




首筋を舐めていた舌先の動きを止め、顔を上げる。




「お兄ちゃん、やめて」




なにそれ。滅多に僕のことをそう呼ばないくせに、こういう時は呼ぶんだ。




「…卑怯者」
「ごめんね」
「そういうときばっか」
「ごめん」
「ずるい」
「だからごめんってば」



僕の性格が悪いというけど、苗木くんだって結構悪いよ。
期待を持たせているんだか現実を突きつけているのか、相変わらず君の考えは読めないや。
さっきまであった舌先の甘さなど既に溶けてしまって、今は塩辛い味が口内に広がっていた。この味はあんまり好きじゃないんだけどなあ。もう、誠くんの馬鹿。



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