舞台装置

 築き上げてきたものを壊すのなんて、簡単だ。
 彼が私の誕生日でロックしたスマートフォンの中身を、無断で覗き見る。切りたての髪に、可愛いじゃんと伸びてきた手を振り払って、嘘つきと罵る。裸に剥いた男の尻の窄まりに、指を這わせる。
 躊躇いを崩すほんの少しの勇気さえあれば、ここまで大切に育ててきた関係も、幸せな時間も、いとも簡単に瓦解する。
「大丈夫だよ。ゴムはちゃんと使うし、深爪にしてるから」
 昼の内に替えたばかりの薄水色のシーツの上に横たわる赤也は、恨みがましげな目をこちらに向けた。
 今日は彼の誕生日だ。お高い馬肉のコース料理を食わせて、ワインのボトルを二本もあけてやった。半ば酩酊状態の赤也は、欠伸を噛み殺していたくせに、「すげー美味かった。こんばんはアンタのしてほしいことなんでもする」と殊勝な言葉を連ねた。
 じゃあこのままうちに行こうか、大人の女じみた声で私が誘うと、何を想像したのか、一重瞼に縁取られた大きな目をかまぼこみたいに細めた。やーらしと、とろとろとした足取りで後を追ってきたのがおバカで可愛いかった。
「今日はね、ハナから抱かれるつもりなんてなかったよ」
「決め打ちかよ」
「やるとしたら他に日はないと思ってたから」
 じゅこ、と汚い音を立てて凹むローションのチューブ。コンドームを嵌めた指に粘液をまとわせて、赤也のお尻の穴にそっと触れる。壊したくないから、とてもとても優しく。だけどここは赤也にとって、ただの排泄物の出口ではない。
「入り口としても使ってあげてるなんて、ここに穴開けた神様も大喜びしてるね」
 ね、のところで指を埋め込む。十号の人差し指は、いとも簡単にその中に滑り込まれていった。
「は、意味わかんね」
「何も分からない馬鹿な赤也でいてほしかったんだけどなぁ。お尻で気持ちよくなれるのも、知らないでいてほしかった。でもまあ、私に出会う前から“そう”だったなら仕方ないか」
 入り口でくるんと指を回したら、「気持ち悪ぃ」と低い声が響いた。判断力を奪うためとはいえ、呑ませ過ぎたか。後ろの孔を拡げられる感触を堪える赤也の頬は青白い。
「吐いてもいいよ。綺麗に拭いてあげるし。あ、窒息したらいけないから仰向けじゃダメだね」
 ほら横向いて、と優しくねだったら、赤也は小さく唸りながら従った。素直で可愛いところが大好きだったけど、こういう姿を別の人間にも晒しているのだと思うと、息が止まりそうになる。
「……あんまり、そこ」
 私が入り口を拡げることばかりに固執するので、赤也は焦れたような声をあげた。
「もどかしい? 指が細すぎるのかな」
 一旦引き抜いた人差し指に中指を伴わせてまた収める。ふぅ、と吐息混じりの喘ぎが部屋に響いた。
「ねえ、切原赤也くん」
「なんだよ」
 やらしい空気になったときの、一段低い険のある声。お尻を弄られてるだけなのに、赤也の前は半分芯を持っていた。
「夕方にうちに来た時から眠たそうだったけど、日付が変わったとき、二十四歳になったときどこにいたの」
「っ、柳先輩の家」
 お尻の中のイイらしい部分を指先でさする。偶然触れたフリで、そのまま通り過ぎたら、白い腰が震えた。練習に付き合ってくれた相手の何倍も、この男は敏感らしい。
「すごい、正直に教えてくれるんだ」
「なにいってんのか…っ、ぁ」
「大丈夫。ちゃんともう知ってるから。ごめんね、スマホの中見たよ。柳先輩の誕生日でロックしたアプリの中の写真も全部」
 ずっと前から、もしかして浮気してんのかなぁくらいには思っていた。
 スマホの液晶に表示されるラインのメッセージが非表示の設定にされていたり、しばらくシてないはずなのに妙に勃ちが悪い日があったり、仕事が休みの日に何時間も連絡がつかなかったり。
 それでもまあ赤也はぼちぼち優しかったし、可愛かったし、顔とか声とかちょっとおバカなところも含めて全部が私好みだったので、よそで女の子を引っ掛けてきてることくらいは我慢してやろうと思っていた。理解のある歳上の恋人を演じることが、心を守るための術だったから仕方がない。
「男だからバレないと思ってたんだろうけど、結構露骨だったよね」
 赤也に、柳先輩という大層背の高い知人男性がいることは彼と出会った日から知っている。

 溜まった書き物を片付けるために足を踏み入れた喫茶店は、おかわりのコーヒーをセルフで注ぐシステムを採用していた。最初の一杯が三百円。その後はおかわり自由。法外に安い。店はいい具合に鄙びており、客もまばらだ。長く滞在させてくれるだけでも有難いので、その黒い液体に質を求めてはいけない。
 作業をひと段落させ、不味いまずい胃が死ぬと頭の中で繰り返しながら、何時間前に補充されたかも分からないコーヒーをカップに注いでいると、隣に若い男が立った。
 肘の触れ合いそうな距離だ。なんでそんなに近くに。後ろに並べばいいのに。きっと無意識なんだろうけど、居心地が悪い。こみ上げる自意識をかき消すように、かかとを引くと、顔を上げた男と視線が合う。目尻の吊り上がった一重瞼に縫い止められた。男もまた私を見つめていた。
 口を開くべきか迷っていると、
「ミルク淹れねぇの」
 男がミルクで満たされた安っぽいディスペンサーを持ち上げる。今まで聞いたこともない種類の声だった。心臓を直接引っ掻かれているような心地がする。
「コーヒーはブラックって決めてるから」
「でもここの煮詰まってるし、不味くねえ」
「まあ、そうだけど」
 近くでやりとりを聞いていた店主が、「悪かったな」と男を睨む。
「げ、聞いてたんスか。でもここって喫茶店つーより定食屋でしょ」
 どうやら常連らしい。見れば若い男は半袖のTシャツにハーフパンツというラフな出で立ちで、いかにも食事のためだけにふらっと出てきたという風である。
「……私は、少し不味いくらいの方が眼が冴えるからありがたいです」
「はあ」
 妙な口の挟み方をしてしまった。呆れ顔で眉を下げた店主の隣で、男が笑う。お姉さん面白いね、俺プリン食いたいんだけど一緒にどう──。
 初めから、人の懐に入るのが上手い子だなとは思っていた。人懐こい笑顔、語尾の伸びた喋り方、犬のようで、猫のようで、年下のようで、同い年のようで、可愛くてたまらなかった。それこそ囲ってやりたいくらいだったけど、いい加減な雰囲気に反して赤也は普通に働いていたので、そういう訳にもいかなかった。
 彼は賢くはないが、色んな分野に関心を持っている。映画、ゲーム、漫画、音楽、食べること、体を動かすこと、異性に甘えること、ミーハーだなぁと思うことも多かったけど、十分ごとに違う媒体の話題を振られて、テキトーに相槌を打つ時間には癒された。
 柳先輩は、赤也のその手の楽しげな話題の一つに、自然に組み込まれていた。初めて出会った日、堅焼きのプリンを匙ですくいながら、「柳先輩はこの店あんま好きじゃないんスよねぇ」と彼は言った。それから自分はテニスをしていて、柳先輩は中学時代のテニス部の先輩であることを教えてくれた。とても背が高い男だというのも、その日の内に聞いた。デートのたび、二人で食事をとるたび、赤也は柳先輩の話をした。
 柳先輩は、並々ならぬ読書家である。いつ家を訪れても、活字を目で追っている時間が殆どなのだと、赤也はこぼしていた。それから柳先輩は、ルーズな人間が苦手である。赤也のことじゃん、とその日も約束に遅刻をしてきた彼に私が笑うと、「俺は伸び代があるからいいんスよ」と唇を尖らせていた。
 話を聞く限り、柳先輩と赤也は正反対の人間で、相性が良いとも思えなかったが、彼はやたらに柳先輩を慕っていた。私のうちにいない時間のほとんどを、柳先輩の家で過ごしていた。
 二人で何をしているの、と訊いても、「色々」とはぐらかす。一人暮らしの部屋に殆ど帰っていないようなので、「家賃がもったいないからうちに越してきなよ」と誘っても、物が多いからとそれを拒んだ。
 仲の良い同性がいて羨ましいなという心が、疑いを孕んだものに変わったのは、いつごろだっただろう。半年ほど前に、私は彼のスマートフォンを覗き見た。露骨なメッセージのやりとりは流石に削除しているようだったが、ホーム画面の片隅、鍵付きのアルバムのアプリの中に、それらは存在していた。あれ以降彼のスマホに触れたことはないが、きっと今も。
 細やかに描写するのも苦しいので、ここでは割愛させていただくが、それはそれは鮮烈な写真の数々であった。片割れが自分の恋人であることも忘れて、ちょっと心配になってしまったくらいだ。
 それを見つけたことを、私は赤也に黙っていた。何も知らない恋人のふりを続けた。
 偏屈で、陰気で、依存症の私にとって、切原赤也はただのノータリンの歳下の恋人ではなかった。終の住処にしたくとも叶わない、憧れの全てであったのだ。

 征服欲を持つのは男ばかりだと思っていた。今まで生きてきた中で、両手でぎりぎり足りるくらいの男と寝てきたけど、ベッドの上では自分はいつだって征服されることを望んでいた。
「はぁっ、く……」
 孔に収まった指を出し入れする。時折ローションを足して、ゆっくり時間をかけて。
「すごい音してる、女の子みたいだね」
「俺のじゃ…アッ」
「赤也のじゃなくても恥ずかしいよ。ほら、お漏らししてるみたい」入り口付近で、二本の指を開く。
 ぽかりと開いた空洞、ゴム越しに肉の色が透ける。そのまま指を折り曲げたら、窄まりのフチから白濁した粘液がとぽとぽと溢れた。
 悔しそうにこちらを見上げる目は、赤く充血していた。たまらなくなって、指を引き抜いて、白い体に覆い被さる。耳の裏に鼻先を擦り付けながら、彼を愛おしむ。
「私、赤也の耳の裏の匂いがすき」子供みたいな匂いがするから。
「げーニッチなんスね」
 すごいな、この期に及んでそんな口の利き方が出来るのか。
 姿勢を立て直して、耳朶に前歯を立てたら、吐息が漏れた。少しずつ力を込めていくと、高い声で喘ぐ。これでは仕置きにもならない。
 赤也が痛いのが好きだとは知らなかった。あの男に調教されているのだと思うと、胸がぐじゃぐじゃになったけど興奮する。
「ねえ、日が変わるときは柳先輩に抱かれてた? それとも抱いてた」
 体を落として、淡い色の胸の飾りをつまむ。側面をくすぐるみたいに、するする転がしたら、ストッキングの布ごしに触れた赤也のアレが硬度を増した。直接的な刺激は与えていないのに、殆ど完全な形にのぼり詰めて、物欲しげに震えていた。
「っ……も、無理だから、触って」
 赤也は、責められるとこんな声を出すんだな。
「質問に答えて」
「う゛」
 張りのある外腿を打つ。手の平がじん、と痛むくらいに力を込めたら、ペニスが軽く持ち上がった。
「ほら、どっち?」
「……抱かれてました」
 躾の行き届いた男は、普段は滅多に使わない丁寧語で私の問いに答えた。
「後ろで気持ち良くなったから、今度は前が使いたくなってきてくれたんだ」
「それは、」
 誕生日当日にうちに来たことだけは褒めてやろうと思ってたのに、そこで口籠るか。
「ろくでもないね」
 赤也も、柳先輩も。もちろん私も。
「誕生日プレゼント、さっきのと別に用意してるんだ。使ってもいいよね」
 ヘッドボードの収納から取り出したものを、赤也のヘソに擦り付ける。スケルトンのピンクのボディが可愛い、連珠型のアナルスティック。初心者向けだと聞いていたけど、案外存在感がある。
「準備良すぎません?」
「かなり前から練ってたもん。赤也に気持ちよくなってほしいから、ちゃんと練習もしたよ」
「練習って自分に……?」
 被虐される側に甘んじていた赤也の目が、興奮で吊り上がる。
「お金で何度か買った男の子。五回くらい指名したかな。痛い出費だったけど、だいたい要領は掴めたよ」
「はあ、なん……でっ!」
 コンドームを被せたアナルスティックを、入り口から三センチほど押し込む。
「くっ、」
 前触れもなしに与えられた刺激にのけぞった喉の形が、あんまり綺麗なので、噛みちぎってやりたくなった。
「大丈夫。これは新品だから」
「そういうこと言ってんじゃ……っ、ぁ、フツーに、浮気」
「そういうの言行相反って言うの。知ってる?」
「知らなっ、ア゛ッ」
 赤也にとっては柳先輩との交わりは日常であって、浮気とか本気とか、そういう言葉で括るようなものですらないのかもしれない。
「まあいいや。どんな赤也でも、誰の赤也でも、私は好きだし。ちゃんと最後まで気持ちよくしてあげる」
 練習相手の体で学んだ深さまでそれを挿入して、腹側に先端を押し付ける。持ち手についたボタンを押して振動させると、「ヒッ」と腰が跳ねた。
 もう抵抗する気力もなさそうだったけど、逃げられたら厄介だから、下っ腹を押さえつけながら、ぐ、ぐ、とそこにあたるように持ち手を握り直す。嫌だ嫌だと駄々をこねる赤也が、未だかつてないくらいに愛おしかった。
「なんで嫌なの、可愛いのに」
 好きだよ、と小刻みに震える腹筋の筋に唇を落とす。耳を押し当てたら、腹越しに機械の振動する音が聞こえた。
「っ、はぁ……俺以外の、ヤダ」
「なに?」
「他の奴のおしり、ほじんないで」
 この子は本当に馬鹿みたいなことを言うんだな。
「自分は柳先輩にシてもらうのに?」
「アンタだけ、アンタだけでいいからっ」
「二枚舌でかわいー……しゃぶらせるチンコついてないの歯痒いなぁ。あ、でもアレかな。一緒にテニスしてた尊敬する柳先輩のじゃないと、生意気なおしゃぶりなんかしてくれないか」
「アッ……く」
 振動を一段階強める。ぐっと先端をねじ込むと、赤也の先っぽから透明な涙が溢れた。
「やばっ、も、……」
「すごく嬉しそうだよ」
 今にも暴発しそうなペニスの先っぽを、指で弾く。今すぐにでも無茶苦茶にシゴいて、吐精させてやりたい欲求を堪えて、ふ、と息を吹きかける。
「はあっ……」
「きもちぃ?」
 顎が縦に振れる。
「っ、トーサク的でハマりそ」
「そんな言葉知ってたんだ」
 小馬鹿にするように笑いかけながらも、心は静かに沈んでいった。この交わりを倒錯的なものだと捉える赤也と、私の、互いに向ける情にはかなりズレがある。
 本気で好きになった相手に、愛された分だけ愛したい、優しくされた分だけ優しくしたい、征服された分だけ征服してやりたい……それは極々真っ当な欲求だと、私は思う。
 だけど赤也にとっての私は、そういう心の動きに組み込まれる対象ではないのだ。赤也は柳先輩を抱くし、柳先輩に抱かれる。スマホの片隅に隠された写真を見た限りでは、至って自然に。
 私は男にはなれないし、テニスどころかスポーツをしたこともないから、きっとどれだけ頑張っても、赤也と、自分が望む形で交わることは出来ない。
「っ、うぅ……も、」
「イきそう?」
 前立腺を、玩具の振動によって擦られ続けた赤也の睾丸が竿に寄り添い始めていた。半分程度の深さで留まったアナルスティックのピンクと、かき混ぜられたローションの白濁の対比が生々しい。
「次はいつ柳先輩のうちに行くの?」
「あさっ、て……」
「さっき私だけでいいって言ったのに?」
 薄く涙の膜の張った赤也の目が揺らいだ。もちろん私も、あんなものを言質として、彼を縛り付けるような真似をする気はない。最中に漏れ出る言葉は、泡よりも軽い。
 それよりも、赤也が次に会ったとき、柳先輩に、今日のことをどういう風に話すのかが気になった。柳先輩は、自分が躾けた可愛い後輩の尻の中に、他の人間の情念が差し込まれたことを知ったらどんな顔をするのだろう。
 今日の出来事を燃料に、アサッテの二人は燃え上がるのだろうか。それを想像すると、どうにも虚しい。
 私は、この男と柳先輩の物語の舞台装置になるために生まれてきたわけではない。特別なものは何も持たずとも、せめて自分の人生の主役でいたくて、懸命に働き、好きな男を見つけた。赤也と二人で生きたかった。
 だけどもうおしまいだ。指の間からこぼれ落ちていく砂粒を拾い上げる術を、私は持たない。
「困らせてごめんね。今度会ったら柳先輩に言っておいてね、いつでもあげるよって。だってもう赤也なんていらないもん」
 口からデマカセ、本当は死んでも離したくない。だけどそんなこと口に出せるはずもないから、勝算のない勝負をふっかけられるほど若くはないから、私は虚勢を張る。
「いらないとか、言わな……あっ、アアッ」
 それ以上は聞きたくなかった。赤也の一番敏感な部分に玩具の先端を擦り付けて、振動を最大にする。激しく震える体を肘で押さえつけて、ペニスを根本からシゴきあげたら、赤ピンクの境目から真っ白な後悔がとろりと溢れた。

 白い胸を上下させて眠る赤也は、幼子のような顔をしている。普段とは異なる異性相手の受け身のプレイには、なかなか精神力を削がれたらしく、吐精するなり、「はーすげーヨかった」という言葉を残して眠ってしまった。
「良かったなら何より」
 豊かな黒髪をかき分けて、ほんのり汗の滲む地肌に唇を落とす。今は満足げに寝息を立てている男の興奮が、二回目以降も続くとは思えなかった。柳先輩の、本物の熱に征服される感覚、精神的な圧に、私が扱う玩具が勝てるはずはない。
「あかや」
 そのたった三音の文字の連なりが愛しい。あかや、あかや、繰り返し呼びかけるたびに潰えそうになる胸を押さえて、緩やかなカーブを描く一重瞼を見つめる。彼の愛情をはかることに意味はない。柳先輩が彼をどう想っているのか想像することにも。
 自分のことを作り物だと思って生きれば、この胸の痛みは和らぐ。与えられた役目を全うする、それだけ。赤也に恋をした瞬間から、私の体は、彼と、柳先輩の物語にドラマを与える舞台装置に転じた。そこには倒錯も、葛藤もない。衝動のままに体と舌を動かすだけで、二人の都合の良いように、ときに悪いように、世界は回る。
 半開きの、淡い色の唇に、自分のそれを寄せる。彼の吐き出した空気を自分の体の中に取り込むと、視界の端が白く滲んだ。




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