小説 | ナノ

もうひとりの君
05
「アンッ アンッ ハァンッ」

女のくちびるがだらしなく開き、喘ぎ声が漏れる。

「あかん もう出るッ」

桑原は腰の動きを速める。
肉襞がペニスに絡みつき射精を促す。
愛液でベットリと濡れたそれを膣内から抜き取ると、
女の白い腹めがけて射精した。
へその窪みに白濁した体液が流れて行く。
シルバーのボディピアスが曇った。

まだ呼吸も整わないうちに、桑原は今度は女を
ベッドへ押しけるようにうつ伏せに寝かせた。
張りのある尻を掴んで後ろから挿入した。

「まだやるの?!」

女は飽きれたような口調で言った。
桑原は既に4回射精していて、これで5度目になる。

「まだいけるやろ?お前好きモンやもんなあ」

そう言って、気づく。
そういえばこの女とは、つい数時間前に
初めて会ったばかりで何も知らなかった。
名前くらいは聞いたかもしれないが、
全く記憶に残っていない。
クラブで肩がぶつかって、それから2〜3杯の酒を奢って
ホテルへ誘ったらホイホイとついてきた。

こういうことは良くあった。
セックス依存症の自覚のある桑原は、
時々衝動的に女を抱きたくなる。
その気になれば女などいくらでも調達できた。
桑原は顔が良くて背も高く、学もある。
学生時代からずっと女に不自由したことはなかった。
「やりたい」と思ったら即行動に移す。
そして数時間後には目的を果たしていた。



それにしても今夜はなかなか昂りが治まらない。
桑原は、嫌だと言いながら良がっている女の後頭部を眺めながら、
後背位で犯し続けていた。
女のルックスはなかなかだった。体の相性も悪くない。
だけどいくら抱いても満足できない気がした。

ミッションの後で興奮が冷めやらないのか……?
しかし今までに何度もミッションをクリアしてきたが、
その度にこれほど自分をコントロールできなくなったことはない。

いつもと違う出来事は何かなかったか。
数時間前の記憶を辿ってみる。

いつものように室谷達とふざけていた。
雑魚を数匹始末して20点ほど稼いだ。
あとは…………

腕の中で弱々しく呼吸する名前の姿が脳裏に浮かんだ。
肩から多量に失血し、声も出せないほど弱っていて、
「ありがとう」と唇の動きだけで伝えようとする痛々しい姿が。
なんとか転送が間に合い無事に復活できたから良かったものの、
あの時、桑原はかつてないほど動揺した。

そしてミッションを終え、黒球の部屋からの帰り道、
まるで高校生のカップルみたいに手を繋いで駅まで歩いた。
懐かしいような、くすぐったいようなひと時だった。
他のメンツに見られたらまた冷やかされただろうが、
それすらも気にならなかった。

(それで俺はこんだけ欲情しとんのか。手繋いだだけで。アホくさ)

見ず知らずの女の腰を背後から突きながら、
これでもう終わりにしてサッサと帰ろう、と桑原は考えた。




(あとがき)今回は名前さんが名前だけの登場ですみません。
モブとの濡れ場とかスミマセン。
次回への繋ぎの回となりました。



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