時系列も野球事情もぶっ飛ばして、一ノ瀬塔哉を祝いたいカウントダウンその4。飲んでも飲んでも顔色全く変わらない人いるよね。八嶋先輩が新聞記者になるちょっとだけ前のこと。

※時系列等はぶっ飛ばしてお考えください。成人です。

「オイラの気持ち、受け取ってください!」
えっ。一瞬。うん。二度見。……え?
「一ノ瀬さん! そんなにひょいひょい頷いたらダメじゃんかー!」
借金の保証人になっちゃうよー! 二度見の間にぷんすかと叱責された。怒られるポイントはそこなんだろうか。というか、なぜ怒られているのだろうか。とりあえず疑問符付きで謝れば、一ノ瀬よりそれなりに低い頭はそれを聞いていないのか、肩かけ鞄の中をごそごそと探っている。
「オイラ学校の先輩から教わったんですよ、友達でもうかつに書類にサインしちゃいけないって」「サインはしてないんだけどな……」懐かしい面々での飲み会終わり、駅まで一緒になった帰り道でのことだった。
どうしても敬語が性に合わないのか、それとも相手が一ノ瀬塔哉だからなのか、あかつきの韋駄天八嶋中は昔と変わらないはつらつさで一ノ瀬と接する。それは敬意を持っていないという訳ではない、ということを、一ノ瀬は知っていた。
まあ、並み居るウワバミどもに、飲み比べで参ったと言わせるほどの酒豪だとは知らなかったのだが。本人はけろっとしているのに。ただ、この斜め上の切り込み方は、さすがに酔っているせいなのかと思った。けれど、
「ちょっと早いけど、誕生日おめでとうございます!」
変わらない、太陽のような笑顔で白い息を吐いているのを見て、こちらもやれやれとした笑顔を、浮かべるしかなくなるのだ。
橙色のぱりっとしたビニール袋の持ち手が、金色のシールで留められている。開けてもいいかと聞く前に、中を見てくださいと言われた。
「本、読むようになったんだね」
「なんですかそれ! オイラちゃんと勉強してるんですよ!」
失礼な! とまたぷんすかと怒るものだから、笑いながら謝った。読書が趣味だと、覚えられていたのか。きらきらとした細工も美しい、ブックマーカーがパッケージから覗いていた。実際に箱から出したら、ちらちらと揺れるであろうチャームは野球ボール。
「一ノ瀬さんたちのスクープとれるようになりますからね!」
それはこわいなと言えば、「楽しみにしててくださいね!」と笑う。彼の記事が一面を飾れるような活躍をしなければ、なんてことを思った。

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