時系列も野球事情もぶっ飛ばして、一ノ瀬塔哉を祝いたいカウントダウンその3。お酒飲ませたくなるんだ一ノ瀬さんは。あと酒飲みの方がプレゼント渡しやすい。我らが九十九店長です。

※時系列等はぶっ飛ばしてお考えください。成人です。

「せや、これ渡しときますわ」
年季の入った戸棚から、ごそごそと何かを取り出す。人も少なくなってきた、閉店間近の居酒屋の中。杯を傾ける一ノ瀬の顔も、ほんのりと赤らんできていた。
九十九宇宙は、とある居酒屋を営んでいる。そこに、頻度はそう高くはないが、元チームメイトである一ノ瀬塔哉がひとりで顔を出しに来ることがあった。来る度に「お連れさんは?」と聞く失礼な九十九であったが、「九十九と話しにきたんだよ」と言われてしまえば、お通しくらいはサービスしたくなるのが人のサガというもので。まあ、自分の元主将に対する態度とは思えないが、そのゆるいスタンスは一ノ瀬にとっても存外心地良いものであったのだ。関西弁がそのゆるさに拍車をかけている。
「どうしたの、これ」
さほど大きくはない桐の箱が、一ノ瀬の傍らに置かれる。渡す、という言葉の通りなら、自分に贈られたものということになるが。高級品に見えるのだが、そんなものを彼からもらう心当たりが思い当たらず、九十九に目をやった。
厨房の片付けを始めている彼がこちらを見て、包丁をしまいながら口を開いた。
「先輩で、お得意さんやさかい。誕生日プレゼントくらい、と思ったんですわ」
それを提案したのはツレであるが、と言う。来れば軽く三千円は飲んで食べていくお人を、お得意さんと表現するのは間違ってはいないだろう。箱を開けるように促されたので、一ノ瀬はこわごわと蓋を外した。
鎮座しているのは深い藍色をした、陶器のグラスであった。値は張らないから気にしないようにと、しらっと目を細めて人の話を聞かない顔をする。
グラスと九十九、交互に見た。「今日来てくれて良かったですわ」いつ来るかと思ってましたから。独特のイントネーションに、どこか懐かしさを覚えた。
「ありがとう。……でもこれ、置いていってもいい?」
「専用にお出しする形で?」
頷けば、九十九店長はにやりと笑い、承りましたとうやうやしくお辞儀をした。

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