時系列も野球事情もぶっ飛ばして、一ノ瀬塔哉を祝いたいカウントダウンその2。あの人とさし飲みできるって自慢していいことだと思う。みんな大好き猪狩兄こと猪狩守。

※時系列等はぶっ飛ばしてお考えください。成人です。

「お口に合うかはわかりませんが」
きょとんとした視線から、まるで逃げるように彼は顔を逸らす。そのまま数秒。お互いに止まる。それが、本気の困惑によるものではない、と、気づける猪狩守は、いなかった。
様子を伺うために、彼を見つめる。一ノ瀬塔哉と目を合わせないその表情は、どことなく苦々しげに、というよりも気まずそうな顔をしていた。そのまま数秒、彼は視線を身に受けて、気を取り直したかのようにふふんと鼻で笑った。
「まあ、この僕が選んだプレゼントが、合わないなんてことないとは思いますがね」
そしていつもの高飛車な台詞を口にする。しかし、すぐにもにゃもにゃと口がつぐまれた。それはまるで、悪いことをした子供が、下手な言い訳を自分からやめるかのように。
幼い頃、妹がそんな顔をしていた。こっちはまだ何にも言っていないのに。そんなに威圧感でも出ていたのだろうか。思い出して、つい吹き出してしまった。
「……何で笑うんですか」
「あっ、ごめん」
謝る前に尋ねられてしまった。謝罪をしてから、「ありがとう」と微笑めば、また顔を逸らされた。
高校時代からいつもそうなのだ。猪狩節とも言えるくらい、いやみな言い回しが常な、今や名実ともに球界のプリンスである猪狩守。けれど、先々代の主将である一ノ瀬と接する時は、どうにも調子が出ないらしかった。こうして飲みに誘えるくらいには近しくなったにも関わらず、だ。
誕生日プレゼントを、まさか彼からもらうとは。猪狩の誕生日は、去年になってしまったか。ならば今年は、お返しを考えないと。ふっと口許を弛ませた。
「味わって食べさせてもらうね」
「どうぞ」
くすくすと笑う一ノ瀬に、先程よりも柔らかい表情を、やっと猪狩は浮かべたのだった。

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