クリームプレイです。普段以上にキャラ崩壊注意。
色々とめちゃくちゃ、は、いつもとして、捏造も何でも良い方はどうぞ。
あ、多分そこまでエロくなりません。でも趣味全開。

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このボタンを押すのも、もう何回目かなと考えながら、チャイムが鳴るのを耳にした。
すぐにインターホンから声が聞こえてきた。
『どちら様ー?』
「二宮、です」
『律儀なんだから』
全くと苦笑され、通信が途切れる音がした。ややあってドアの鍵が回り、一ノ瀬が「待ってたよ」と出迎えてくれた。
高校を卒業し、一緒にいるうちに彼よりも高くなった目線で、エプロン姿で微笑む彼を見る。と言っても大した高低差はないのだが、ちょっとした願望でもあったので、そのことに気づいた最初の頃は、内心よくガッツポーズをしていた。
今はそこまであからさまに(たとえ内心でも)喜ぶことはしないが、やはり無意識に優越感を持って口を開いた。
「飯作ってたんですか?」
「ん? ああ、これか。違う違う、ご飯はもう出来てるよ」
さ、上がってと踵を返す一ノ瀬。靴を脱ぎながら、もう準備が終わってエプロンを外してないだけか、と、妙に上機嫌に見える一ノ瀬を訝しがりつつも、脱いだ靴を揃えて置いた。

「……食欲失せるんですけど」
「嘘吐け。そんなにデリケートじゃないだろお前」
げんなりとした顔つきで溜息をつく二宮をスルーして、一ノ瀬はさっさとキッチンへと戻っていく。
小奇麗なリビングは、美味そうな夕飯の匂いと一緒に、甘い匂いがわずかに混ざって部屋中にむせ返っている。不快になるボーダーは、普通の人間なら知らず二宮的にはギリギリアウトであった。
ここのキッチンはカウンターのようになっているので、そこに立つ一ノ瀬の姿が見える。やっぱり彼は、鼻歌でも歌いそうな顔でボウルを氷水の入ったボウルに入れた。
左手に泡だて器を持つ一ノ瀬を、二宮は椅子に腰掛けながら見ていた。外気に触れないよう蓋がされた料理が並ぶテーブルに頬杖をついた。
「お菓子作りとか、そんな趣味持ったんですか?」
「うーん、自炊の延長線って感じかなー。僕、瑞穂とか他の奴と違って、あんまり趣味らしい趣味とかなかったんだよね。で、普通に食べ歩きとかも楽しいけど、自分で作ったりとか出来るかなって思って」
結構最近の話だけど。一ノ瀬の言葉に二宮は「でしょうね」と相槌を打った。でなければ二宮は最初に「慣れたことだ」と呆れ顔で済ましていたのだから。
よし、と気合を入れて、袖をまくる。白い生クリームに泡だて器を沈めると、軽快に動かし始める。「あっ、先食べてていいよ。これはデザートだから」手の動きを止めないまま二宮に声をかける。目つきが真剣だ。マウンドに立った時並みに。
「俺、甘いもんダメだって知ってるじゃないすか」
「知ってるのでコーヒーシフォンケーキにしてみました」
大差ないだろというツッコミは、どうせ聞かないフリをされるだけなので、待ってますよとしかめっ面で座り直した。
とくに気にした様子もなく、まだ時間かかるのに、と顔を上げないまま、カシャカシャと掻き混ぜる音と共に聞こえてくる。
正直腹の虫は小うるさいのだけれど、流石に自分だけ食べるのは気が引けた。それに、二人で食べるためにと、真剣な眼差しでデザートを作っている姿を見るのは、悪い気はしなかった。
「あとこのクリームだけなんだけどね。ケーキ本体は冷やしてあるから、これ終わったら型から抜いて飾っておしまい」
「型なんて買ったんですか」
「まあ形から? でもそれが初めてにしちゃ結構美味くできて、味を占めて色々やってみてるって訳ですよ。レベルアップしたら他の奴らにも食べてもらおうとかも思ってる。……どうゆうのならお前が食べられるかなーとか、考えたりもしてね」
いきなりの笑顔に、頬杖からずり落ちた。動かすスピードが落ちたと思ったら、こっちに向いてそんな風に笑うなんて。反則だろそれ。
ガリガリと頭を掻く。照れ臭い時の癖だ。一ノ瀬はもう一度楽しげにはにかんで、目線を下ろした。
「まだ終わんないんですか」
「もうちょっと」
「腹減りました」
「食べていいって」
「……待ちます」
ステンレス同士が軽快にぶつかり合うのをBGMに、会話は流れる。じゃあ待ってろ、と言って一ノ瀬が笑うと、二宮が黙った。不機嫌そうな面構えはいつものことで、本当にそうじゃないことは分かりきっている。
でも少し急がなければと、スピードを変えたのがいけなかった。
「っあ!」
呻き声と同時に綺麗なくらいビシャッという音がして、一ノ瀬の顔面にクリームが飛んだ。少しの間、そのままのポーズで固まる。
パイ投げの惨劇後とまではいかないが、ちょうどクリームで目が開けられない一ノ瀬に代わって、最初に口を開いたのは二宮だった。
「何を、してるんですか」
黙って右の指で目を拭ってから、一ノ瀬は答えた。
「……失敗したんだよ」
見りゃ分かるだろ。唇の端についたそれはそのままに、とりあえず目を拭いながらそう続ける。珍しく低い声。そりゃそうだろうなと思いながら、二宮は一ノ瀬から目が離せなかった。
拭った二本指を、そのまま何気ないようにしゃぶった。ちゅ、と音がしていったん抜かれると、「ん、甘い」と呟いて、ついている指の側面を舐る。
もちろんクリームを取るために違いない。違いない、のだけれど。
そのまま、中指がぴっと左頬のクリームを取る。おいしいけど、やんなるね。また赤い舌が覗く。ふつうに味見したかったんだけど。鼻の凸凹についたクリームに指を埋めると、頬骨の辺りをゆっくりと拭う。まだ取れてない気、する。皺が寄った眉間にまた指がいく。白が残る指を口元からほんの少し離しただけで、「瑞穂、取れた?」
盛大な音を立てて二宮が椅子から落ちかけたのを、一ノ瀬はただ平然と見ていた。「大丈夫か?」と小首を傾げると、二宮は辛うじてハイと返事をして、下を向いて座りなおした。
まだクリームが微妙に残っている顔が、小さく笑ったのは、二宮には見えなかった。
「瑞穂」
「……何ですか?」
さっきと同じ二本指で、ボウルの内壁に沿って、甘くて白いクリームを絡め取る。良い具合に固まっている。自画自賛しながら、顔を上げた二宮に向かって、腕を伸ばした。
よいしょと身を乗り出して、白くまだらに染まった指を差し伸べた。
「味見する?」
何食わぬ顔。のように、見えた。のは、こっちが一気に熱くなったのを自覚しているからに違いない。
絶対、絶対に、わざとだ。
二宮は立ち上がって、一ノ瀬の指を咥えてやった。っ、と息が詰まるのが聞こえたから、舌に溶ける甘さは我慢することができた。
思いっきり吸うと、口の中で指が動く。舌を絡めると、甘やかに邪魔をされる。クリームはとっくに熱で溶けていた。
喉を落ちる甘みを飲み下し、唾液を出来る限り舐め取ってから、手首を掴んで彼の指を引き抜いた。そしてキッチンへと回る。
一ノ瀬を腕の中に閉じ込める。額のクリームに口づけて、それに汚れた髪の毛も食み、とにかく目についた彼の肌より白い白を舐めることに躍起になった。そして気がついたらキスをしている。くそ甘ったるい。
―――顔に、なんて、フラッシュバックしたどころか、やったこともない。要すると妄想。で、妄想を掻き立てにきやがった。
まんまと罠に嵌められた気持ちだった。しかし、後悔するわけではない。仕方ない。興奮したのが悪い。そして、それを望んでいる(かもしれない)彼がずるい。
彼の首筋に吸い付きながら、右手を横目に見たボウルに伸ばす。リビングに入る前に手は洗った。風邪は予防が大事、なんて言われて。
ねとりと、指に取ったクリームを首筋になすりつける。たぶん局部以外だとかなり弱いうちに入るのが首周りで、塗った片っ端から舐めていく。肩のラインを舌でなぞると、逃げるように、しかし矛盾して晒される喉笛が艶めかしかった。
「みずほ、あっ、っめし、冷め、」
「味見しろって言ったのは、あんただろ」
「っあう、っふぅ……」
崩れないように必死で、しがみつかれる。ん、ん、と耳元に漏れる声。肌に触れる息。シャツを引っ張る手。気まぐれのように、こっちの肩にも噛み付かれる。
一挙一動がたまらなかった。みずほ、と、好きではない名前を呼ばれることさえも。
背中に手を回す。正確には、エプロンに邪魔をされない位置から、手を侵入させる。滑らかな皮膚に、鳥肌が止まらない。
やりやすいようにして、撫でながら、前へと移動させてゆく。思っていた以上にエプロンは壁にならなかった。
そして、胸に到達した。したところで、
「い゛っ……!!」
二宮は思いっきり、一ノ瀬に肩を噛まれた。甘噛みとか生ぬるいものではない、全力だ。血が出かねないレベルの。
自分から誘ったくせにそれはないだろうと、非難の目線を送ろうとした時には、すでに唇を奪われていた。
離れた瞬間、甘い匂いがした。
「腹減ってたんじゃ、なかったの?」
赤い顔で言われて理性がぐらつく前に、思い出したかのように腹が大きく空腹を知らせた。
今度は別の意味で、二宮が顔を赤くする番だった。
「……塔哉さんでしょうが、味見しろっつったの」
「味見、って言ったじゃん」
と、するりと腕が首に絡みついた。身体が更に密着する。
一ノ瀬の唇から、そっと耳の中に滑り込んだ台詞に、この場で襲いたい衝動を必死で押さえ込んだ。込まざるを得なかった。
「……ずっりいよ、あんた、ホントに」
「瑞穂の前でだけ、だよ」
ふふっと笑って、一ノ瀬はまた軽いキスをしてから、ボウルに蓋をするため二宮から離れた。大人しくテーブルに戻ることしか、今の二宮には出来なかった。


「デザートは、ディナーの後に待ってるものだろ?」



(使いたいなら使ってもいいけど、ケーキ用の分がなくなったらどうしよう……)
(つ、っかわねーよ!!)

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