黒狼荊姫



私の恋を悲劇にするつもりはないよね?

ここから連れ出して

今すぐにでも


囁き声で「オヤスミナサイ」
まだ残る熱を惜しみなさい
大人も微睡む時間だ

甘く溶けてしまいそうなクリーム
その味すらもいっそクライム
今夜もどこまで行けるの?


そのままそっと顔を寄せて
苦いものだって嫌いじゃない
敗北の味は毒リンゴに近い

『知らないことなんて何もない』
思っていた僕が愚かだった
全部見せてよ 貴方だけには
見せられると思ってる―――


ずっと恋しくて いばら姫
コックコートはプライドの証
魔法は時間を止めない
大人になって 分かってしまった

遅かったんだ ジュリエット
子供の時間(とき)は取り戻せない
そうだろう 当然の話さ
そうだとしても まだ間に合うかな


ねぇ 私と生きてくれる?


無理するなと和らぐ目線
素直に返すことができません
それでも許してくれてる

不器用に響く小夜曲(セレナーデ)
その瞳に惑わせないで
見えたら 求めてしまうの


焦がれるほどに 痛いほどに
好きになってたなんて言えない
口を開けば出てくるのは「嫌い」ばかり

逃がさないと 差し出す黒い手
傷だらけの指でもいいのなら
離さないで 逃げはしない
喰べられてしまっても


鐘が鳴り出した いばら姫
ガラスの靴は必要ない
だってね 見つけられるでしょう
森が 眠りについたとしても

ずっと認めたくなかった
要らないなんて嘘もついた
だけどね 貴方の所為だ
言わないくせに 愛されたくなって


ほら 僕はここにいます


貴方の心 覗いても構いませんか
欲しいものの中に僕は入っていますか
答えは知ってる 疑うつもりじゃない
気がついたらもっと 欲張りになっていたのです

早く迎えに来てよ


糸車に触れるより 面白そうなことがあるらしい
どうしようも 迷うわけがない
だってアナタは嫌わないでしょう

でも 度が過ぎたワガママを
する気はないんだ 大人だから
それなら 素直でいいよね
つけられたのは 牙の痕でした


強がりすぎた 荊姫
狼に攫われたらしい
王子じゃなく 敢えて選んだの
本当の望みは それだけだから


ああ 永遠(とわ)に僕の貴方でいて


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