小説 | ナノ

 おかえりなさい

─おなじ、匂いがする。
急に抱き締められたあのときとおなじ、あったかくて、ひだまりのような、優しい匂い。

……ルークの、匂い。


「おかえりなさい…っ!おかえりなさい、ルーク…っ」

帰ってきた。
ずっとずっと、待っていたひと、──ルークが。

生暖かい涙が、久しぶりに自分の頬を伝っていくのをうっすらと感じる。軍人になると決めてから、どんなに辛いことがあっても我慢して、押し込めていた涙。最後に泣いたのはいつだったかしら、なんて考えながら、ルークの肩に顔をうずめてそっと背中に腕をまわす。

ルークも泣いていた。
ただいま。ただいま、ティアと、震える声で何度も呟いて私の体を強く抱き締める。そのあたたかさに、更に涙の量が増した。


いつも気付けば朱を探していて、当然見付からなくてあなたがいない現実を目の当たりにして。
夜は、明日こそ帰ってきてくれるかしらと小さな希望を抱きながらも、ずっと見ていたはずのだいすきな笑顔や私を呼ぶ声を、いつか思い出せなくなってしまうのではないかと不安で震えていた。


─でも、もうそんな不安で震えなくても、いいのね。


「ティア…待っててくれて、ありがとう」

嬉しそうに細められた目元にたまった涙を拭い頬に触れ、確かにここにあるルークの温もりを感じながら、すきだと言ってくれた譜歌を口ずさんだ。


fin


──────
実は8月から書き始めてたもの。
ED直後の話です。
ルークもティアも、抱き合いながら嬉し泣きしてればいいなぁという妄想から広がりました←

101025 べべ



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