「籠女」

『はい』

「上の命令じゃ、来なさい」

『御意』

「籠女様…面をお忘れなきよう」

『ん…』



自分が呼ばれることは本当に珍しい

着物を装った私に密書や命令を渡す老人は

所謂私にとって上司のような者だろう


連れ出されたのは何処かの地下室

地下と地下を繋ぐ廊下に一人の狐の面をつけた

男がそこに、立っていた

金のオールバックの髪に狐の面

私と同じ狐の面…。



「アイツを暫くお前の所で面倒見てくれ」



それだけ伝えるだけ伝えれば帰っていく男

そして二人っきり



『名は?』

「紺」



そうか、"真"のメンバーは皆

動物の名前だから違和感があるんだろう

まっ狐の面だから狐と名乗られても

紛らわしくなるだけだったかもしれない



「アンタが総隊長?」

『そうなるかな、私は籠女』

「…」

『まぁ、私達は基本束縛なんてないから自由にしてくれればいいよ』

「早く、アジトに案内してくれ」

『…はいはい』
















何一つ会話をすることなくアジトへ辿り着く



『ただい「籠女ちゃー」…。』

「…なんだ今の」


"バタン"


引き戸で助かった…。

扉を開けた途端に現れた小鳥

こんな時に抱き付かれて面が取れでもしたら困る

まだ素性も判らぬ相手に素顔を見せるほど

馬鹿ではない




"キィー"

「酷いよ、籠女ちゃん…。」

「コイツは?」

『私の大切な子よ』



小鳥に面は着けさせていない

かと、言ってアジトから出させてもいない




「あのね、今日初めてクナイが的に当たったの」

『そう…よかったわね』














それから数日経ったある日…


「あの紺って人さ」

『ん?』

「ずっと籠女ちゃんの事を見てる気がするんだよね…」

『そうかしら』

「だって、視線感じるもん!」

『そう…』




小鳥が気付くくらいだ

私が気付かないはずがない

確かに常にと言っていいほど視線を感じる



「ワタシノ…ニ…。」

『え?』

「んーん、何でもないよ、ヘヘッ」



ボソッと何かを呟く小鳥

一瞬ほんの一瞬、小鳥が別人のような人

そんな風に見えたけど気のせいらしい…。





『紺…』

「んだよ?」

『任務』

「内容は?」

『里外れの森に火影を狙う元木ノ葉の抜け忍達が潜んでいるらしいの何れも上忍レベル…殺れる?』

「なめてんのか?」

『上出来…メンバーは「俺とお前」決めるの私なんだけど』

「怖いのか?」

『…じゃあ、あと一人は「分身でいいんだろ?」』


"ボワン"


『用意周到ね』


まるで、この時を待っていたかのように

全てが簡単に進んでいく





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