薬売りさんと凧揚げ



旅先で子供になつかれて。
凧揚げをすることになったお正月。

でも風がなくて揚がらないから、最初にヒロインが凧を持って支えてあげて、子供が走り出して揚がる感じ。
数人の子供がわらわら。
薬売りさんは子供と戯れるヒロインを穏やかに傍観してる。

でもそのうちもっと高く揚げたいとか言う子供達。
そして「お姉ちゃん走ってよー!」の流れに。
大人だから僕達よりも高く揚げられるでしょ理論。


「あー…でもどうだろう、お姉ちゃん着物だからなぁ、全力疾走は…」

「たくし上げれば大丈夫だよ!うちの母ちゃんよくやってる!」

「あはは、本当?じゃあ、」

「ヒロインさん、そのようなことはさせませんよ」

「ぁ…薬売りさん、ふふ、やっぱだめだよね」

「はい」


さすがにヒロインにそんなはしたないことはさせられない薬売りさんが口を出す。


「じゃあ薬売りのお兄ちゃん走ってよ!」

「嫌ですよ、面倒くさい」

「えー!」

「風が吹くまで待ちなさい」

「けち!」


子供達に非難される薬売りさん。
軽くあしらう薬売りさん。


「あ、じゃあさ、薬売りさん、」

「なんですか、ヒロインさん」

「ハイパーさんなら全力疾走してくれそうだし……薬売りさん、解き放つ?」

「ふ、放ちません」

「やっぱりだめかー、ハイパーさん体育会系だしいいと思ったんだけどなー、うおらー!って、」

「まぁ…想像できなくはないですが…」

「くすくす、でしょ?」


で、そうこうしてるうちにいい風が吹いてきて。
結局走らなくても風だけで上手に高く凧を揚げてあげる薬売りさん。
「薬売りの兄ちゃんスゲー!」とか言って子供達に羨望の眼差しを向けられているといいです。



解き放つ?放ちません、の優しいやり取りが書きたかった。
あの時代の言葉は無視した感が強いです。


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