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「あーあっ、血の匂いがしたから見に来ただけなのに…

ひどいよ、優姫ちゃん。


ホント……ついつい見に来ちゃっただけなのにさぁ…」

そう言いながら藍堂は風によって運ばれる血の匂いの持ち主を探す。


「――あ…、いい匂い…




ああ、キミの血か……」


しかし女子生徒は危機感など微塵も感じずに、勘違いして喜んでいた。


「きゃあ!どうするどうする!?


いい匂いだって!」


「藍堂先輩!彼女達に一本でも指に触れたらお仕置き………」
「転んだの?

いい匂いっていうのは………







キミの血だよ、優姫ちゃん」

そういいアルテミスを構える優姫に近付き優姫の手に自身の手を添える藍堂。
優姫は言い寄られて初めてその時自分が怪我をしていることに気付いた。
おおよそ、木を伝って降りてきた時に切ったのだろう。


「それはどうもっ」


優姫は今度は自身が危険だと感じ、急いで藍堂と距離を取ろうとするが藍堂がそれを許さない。


「んーー。ホント、


そそるね。とっても」


その瞬間、藍堂の牙は優姫の手の甲を貫いた。
女子生徒達は人外の行動を目にし、動けないでいた。



「(まずい)

先輩、ダメです。藍堂先輩……」


「………もっと欲しいなぁ…

首からいただいていい?」

優姫は必死に逃れようとするが藍堂の行動はエスカレートしていく。



「だっ、だだだめですよ、あげられません先輩!!」


自分の話を全く気にせず自身の首に藍堂の牙が触れそうになった時、救世主が現れた。



「学内での吸血行為は一切禁じられている。

血の香りに酔って正気を失ったか………ヴァンパイア」


零が藍堂の頭に自身の対吸血鬼用武器_血薔薇の銃(ブラッディー・ローズ)を突きつけた。
しかし藍堂は慌てた様子も見せず、


「へぇ………?」


「零、だめ!!」


「でも、もう味見しちゃった」


その言葉を聞いた瞬間、零は優姫の反対を押し切り、銃を撃った。

しかし弾は外れて、優姫の後ろにあった木に放たれた。
銃弾が当たったところには紋様が浮かび上がっている。



「その銃、収めてくれるかな……

僕たちにとってそれは脅威だからね…」

「ん………」


するとどこからか音もなく枢がやってきた。後ろには名前もいた。

「か、枢様………!?」
「寮長……」


「さてと…この痴れ者は僕が預かって、理事長のお沙汰を待つ。


いいよね?錐生くん」

藍堂の襟元を掴み、枢は零に話しかけた。

「零……」

「……連れて行ってください、玖蘭先輩」
そう言うと、零は銃をしまった。


「優姫は名前に怪我を治してもらってね…

頼んだよ、名前。

架院、なぜ藍堂を止めなかった。

君も同罪だ」

「〜〜っ;」


架院暁、完璧にとばっちりである。
そして今まで黙っていた名前がようやく口を開いた。

「優姫ちゃん…怪我、治そ?

見せて……



あと、この子たちの記憶は?」


「あ、大丈夫みたいです。

理事長が今夜の記憶を無かったことにしてくれるだろうし……

可哀想だけど…」


優姫は名前におずおずと手を出しながら答えた。
優姫に近づく名前を零は黙って見ている。
名前は怪我に手をあてると力を込めた。すると、白い、仄かに金色が混じった光が浮かび上がった。

少しすると名前は手を放した。
優姫の手には怪我の痕すら無く、綺麗に治っていた。



「じゃ、後は頼むけど……


怖い思いをさせて悪かったね、優姫」


振り返って、枢は優姫を心配した。


「いえっ!!ほんのちょこっとかじられただけで
何とも無いですから!

名前先輩にも治してもらいましたし!

後は任せてください!」

その言葉を聞くと、枢は違反者2人を連れて去っていった。

そして入れ替わりのようにルキがやってきた。
優姫はタイミングの所為か、少し驚いていたが零は急に顔を強ばらせた。


「はぁ…今理事長室に行ったが黒主灰閻は留守だ。

俺が術式をしよう」

そう言いながらルキは髪を掻き揚げ、女子生徒に近付き術式を施した。
彼女達は目が覚めると今夜の事は忘れているだろう。



mokuji
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