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夜、理事長室には2人の来客者がいた。


「やあ、枢くん。無神くん。君達が来るような気がしていたよ」

椅子に座っていた理事長が立って彼らを迎い入れた。そしてルキがドアを閉めたのを確認すると枢が話し出した。


「……黒主理事長。錐生零をいつまでデイ・クラスにおいておくつもりなんです?


__彼にはもうすぐそこまで……

"その時"がせまっている」

「……」


「…さすがに枢くんたちだけは欺けなかったか……
やはり君達は別格だよね。先祖からの血脈にただの一滴も『人間』の血が混ざっていない…
今ではヴァンパイアの中でも稀な血統……強力だった古のヴァンパイアの能力をそのまま受け継ぎ他のヴァンパイアにすら恐れられる存在だ。


ヴァンパイアの中のヴァンパイア――――

"純血種"。…君達の存在のお陰で問題児ばかりのナイト・クラスがよくまとまっているよ」

理事長の話を黙って聞いていた枢は痺れを切らし、黒主に迫った。

「黒主理事長。貴方を信頼しているのでこれまで口出しをさけてきました。ですが貴方は多少の手をうっただけで今も普通の生徒として零を扱っている……

貴方はご自分の平和主義の理想を零に壊させるつもりですか?」

怒りが溜まっている枢が理事長室の机の上ににのせた拳を握ると枢の爪で表面が剥かれてた。

「確かに、その件は俺も同意だな。これ以上放っておくと他の生徒に被害が出るだろう」

ドアにもたれて今まで2人の話を聞いていたルキも理事長を非難する。

「…しかし錐生くんは両親をヴァンパイアに殺され…その血の海の中で彼だけが奇跡的に助かった。これ以上酷なことをできると思うかい…」

「けれど一家を襲ったのはただのヴァンパイアじゃない―――

僕と同じ純血のヴァンパイアなのでしょう?」

発した言葉が疑問系で締めくくられていても枢はすでに確信付いていた。


_________


一方、ナイト・クラスは休憩時間。名前は廊下を1人で歩いていた。


「気配が――――」



少しばかり焦ったように名前は走り出した。廊下を走り、階段を駆け上がって目的の人物を見つけ出す。



「零!」



荒く呼吸を繰り返していた零は名前が来たことににさして驚いた様子はない。零の様子に名前は表情を崩し零に近づく。



「すぐに理事長室に行って」

「っは、なせ…、!」



男女差はあるが名前は純血の吸血鬼だし、零は弱り切っている。名前は無理矢理零を掴み引っ張った。



「もうここまで近付いてきてるなら優姫ちゃんが危ない。私も付き添うから理事長室に行くよ」

「零…!」

「!」



ハッ、と見上げれば優姫が階段を駆け下りてきたところだった。



「え…名前先輩?」



零と名前が一緒にいる事に優姫は驚き目を見開くが、名前はそんな優姫を軽く睨む。



「優姫ちゃんは来ちゃダメ」

「え…来ちゃダメって、零は?どうかしたんですか?」

「ッ!」



心配そうに零に駆け寄った優姫を名前は掴み損ねる。



「ぜ――――…」



零の瞳を見て、名前は本格的にヤバいと冷や汗を流して走り優姫を横から突き飛ばした。



「いっ…!」

「噛んで!!」



バッと袖を捲り腕を差し出せば、零は一瞬の躊躇の後名前を抱きしめ、差し出された腕ではなく、首にその牙を皮膚に突き刺した。



「っーーー!!」

「ぜ…ろ…!?」



人間である零が血を飲んでいる。目を疑う光景に優姫は硬直してしまった。



「……っゴメンッ」

「!」



がく、ん、と膝から崩れ落ちた名前を咄嗟に理性を取り戻した零が支えた。



「名前先輩!」

「……優…姫…俺は……」

「……はぁっ…」



酷く顔色が悪い名前は唇をかみしめ目を閉じていた。





mokuji
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