02
踏み出しかけた足を戻して、ゆっくり振り向けば―…
「…ッ、俊」
嘘。
何で、俊が―…
全力で走って私の目の前まで来た俊は、肩で荒く息をしてる。
ぼやりと、視界がぼやけるのが分かった。
何で、そんな必死そうに…
「…んで、来たの…」
「何…黙って行こうとしてんだよ!」
涙が零れそうになって下を向けば、両肩をガシッと俊の両手に包まれた。
大きな、暖かい手。
私の…大好きだった手。
いつもとは違う感情の込もった俊の声に、思わず顔をあげる。
そこにあったのは―…いつもの冷静な表情とは程遠い、辛そうな俊の顔で。
「俊…」
「何で言わなかったんだよ…何で…」
「…ごめん」
「…残される方の気持ちも考えろ!」
肩を掴まれたまま、勢い良く前後に揺さぶられる。
そんな俊の様子に驚くけど、今度は俊がうつむいてしまって表情が見えない。