01


さよならは言わずに




「名前、行くわよ」
「うん…」

ゴゴゴ…と凄まじい音を立てて近づいてくる新幹線。
しばらくすると、私の目の前でゆっくりと停止する。


ああ…これで終わりなんだ。


周りを見渡してみるけど―…見知った顔はない。

当たり前だよね、誰にも言ってないんだから。
今は皆、いつも通りの時間を過ごしてるんだろうな。
朝練…してる頃かな。

私がいなくなったって知るのは…あと少し、先。


ごめんね、皆。ごめんね―…俊。

さよならも言えない、弱い私を許して。
君に“さよなら”を言ってしまえば…永遠の別れのような気がしちゃうの。


だから、このまま行くね。

君と繋がってる…今の状態のまま。


ずるくて、ごめんね。



スーツケースに詰め込んだ荷物を車内に入れて、私も新幹線に乗り込もうとした。

その瞬間だった。



「―…! 名前っ…!」


愛しい君の、声がしたのは。