戦士との出会い1/2
春のうららかな日差しが暖かいとある日、とんでもないことに……
少女が空から降ってきた。
「キルハ兄さん!」
ティルの必死な声が聞こえて来た時は、何事かと思った。兄と慕ってくれるあの少年に何かあったのだろうか、と。
現場に着いた時、ティルに何かがあったわけではないことを知り、少しホッとした。が、それもつかの間のこと。
重傷を負った、瀕死状態の少女が自分の目に止まった。ただならぬ状況に声を失った。
「その子は……」
「分からない。いきなり空から落ちてきたんだ。でも兄さん、この人、このままじゃ死んじゃうよ……!!」
切羽詰まった声に、キルハははっとした。そうだ、このままでは少女が危ない。
慌てて駆け付け、傷の具合を見た。誰かに切り付けられたようだ。キルハには、それが刀傷だとすぐに分かった。
だが、これは……。
「……兄さん? この人は大丈夫だよね、死んだりしないよね?」
「あ、うん……とりあえず家まで運ぼうか。傷の手当はそれからだ」
「じゃあ、ボクの……村長さんの家に運ぼう」
「そっか、ここからだと村長さんの家が一番近い……」
村長の家に運ぶことを判断し、さっと少女を抱きかかえ、自分の家に運ぼうとする。いつの間にか野次馬が集まっていたのか、周りには人だかりが出来ていた。
「よしなさいよキルハ、ティルも……そんなよそ者の面倒を見るなんて」
そのうちの一人が、少女を運ぶキルハに話しかけた。非難めいた口調にムッとしながらも、
「身内でもよそ者でも、人を見殺しになんか出来ないよ」
と、キッパリ言い切った。
すると、「キルハってば、本当にお人よしなんだから……」とぼやく声が聞こえてきた。
違う。これはお人よしとか、そういう問題じゃない。今にも死んでしまいそうな人間を助けることは当然のことではないか。
それはつねづね思っていることなのだが、この村の人々には理解してもらえなかった。よそ者に対して冷たい、このナザム村では――。
家のベッドに少女を横たえると、ティルは少し安心した表情でキルハにお礼を言った。
「ありがとう、兄さん。皆、どんなに言っても助けようとしてくれなかったから……」
「うん、仕方ないさ。ここはそういう村だ」
さて、あとは傷を見るだけ……なのだが。
「……ティル、誰か女の人を連れてきてくれないかな」
「え、あ……そうだね」
察したティルは、「すぐ女の人探してくるね!」と部屋の戸を開けて出て行ってしまった。
(とりあえず……腕の手当をしようかな)
一番の重傷である胴の傷は、ティルが女の人が来てからでも大丈夫だろう。傷は深いと言っても、すぐに死に至るほどのものではない。
「一体誰が……」
しかも、空から落ちてきたということもあり、謎は深まるばかりだ。
「兄さん、連れてきたよ!!」
「ありがとう。じゃあ早速、始めようか」
腕に包帯を巻き終わると、キルハはその一番ひどい傷を看るべく立ち上がった。