春風舞う季節と共に | ナノ


僧侶との出会い2/2

「すごい……」


そうとしか言いようがなかった。
少女の周りには、先程の男達が転がっていた。
襲い掛かった男達を返り討ちにしたのだ、自分より年下に見えるこの少女は。


「ふっ、まだまだ修行が足りぬな……なんてね!」


誰かの真似をしたのだろうか、声色を低くしてそう言った少女は、戦っていた先の人物とは思えない。
扇、鞭、剣、とさまざまな武器を駆使して敵を翻弄し、そして勝利を収めた。
しかも、当の本人は無傷である。


(この方は一体……?)


その時、向こうからこちらへ走ってくる影があった。


「ユラン! ふらふらと勝手にどこかへ行くなと行っただろう!!」


「ふらふらなんかしてないもん、人助けしてたんだもん。それとも人助けもすんなって言うの?!」


憤慨するユランと呼ばれた少女が言い返すと、少年は、そういうことじゃない……と脱力した。


「そうじゃなくて……それなら俺も一緒に連れていってくれ! 俺はセントシュタインに来たことが無いんだ!!」


つまり……セントシュタインの地理に明るくない、というわけだ。


「あはははっ、いい歳して迷子とか情けなっ!」


「お前な……」


「あ、あの……!」


思い切って声をかけると、二人は一斉に振り向いた。


「あ、その……私、僧侶のフィリアと申します。助けてくださり、本当にありがとうございます」


少し気圧されながらも、フィリアはとりあえず自己紹介とお礼を言った。


「当然のことをしたまでよ。あ、私ユラン! 旅芸人ね。で、隣のワカメが魔法使いのタクト」


「ワカメじゃない」


「でも、色も形もそっくりよ」


「ほっとけ!」


軽くユランと言い合いになったが、タクトと紹介された少年はフィリアに軽く会釈をした。


「旅芸人さんと魔法使いさん……? もしかして、黒騎士の事件を解決したっていう……」


「知ってるの? わぁ、リッカの言ってたことって本当だったんだね」


あっけからんと言って退けたユランに、フィリアは目を丸くした。本当に、黒騎士事件を解決した張本人だったなんて。


「フィリアさん、だっけ。職業は僧侶って言ってたよね」


「あ、はい」


確認を取ると、ユランは「僧侶か……」と呟き、何事かを考えていたが、すぐに決心が付いたのか、晴れやかな笑顔をフィリアに向けた。


「ね、私達と冒険してみる気ない?」


「……え?」


何も、驚いたのはフィリアだけでは無い。
傍らの少年も「はぁ?!」と声を大にして驚いていた。


「お前、何考えてるんだ?!」


「いーじゃん、僧侶いなくて困ってたところだし。こんだけ優しそうで美人な僧侶さんなら、私大歓迎!!」


「そういう理由かよ!!」


フィリアが驚きで声を出せないうちに、会話は漫才と化していた。


(……そうだ、この人達なら)


もしかしたら、あの町を何とかしてくれるかもしれない。
あのことを頼んでみよう。そう決意し、思い切って話を切り出した。


「あ、あの……そんなお二人さんに一つお願いがあるんですが!」


「「お願い?」」


「はい、あの町を……私の故郷を助けて欲しいんです……。その代わりと言っては何ですが、私もお二人の旅に同行させていただきたいと思います」


いかがでしょう、と尋ねると、ユランは逆にフィリアに尋ねた。


「町を助けて欲しいってーと……もしかして、人助け?」


「はい……そう、ですね」


「タクト、次の目的地はそこに決まりね!」


賛成も反対も聞かず、すぐに決定してしまったことにタクトは軽く溜息をついた。こういうことは何もこれが初めてというわけではないらしい。


「んでフィリア、その町っていうのは?」


いつの間にか呼び方が“さん付け”ではなく呼び捨てになっていたことに、フィリアは不思議と気にならなかった。


「はい、ここから北東にある、ベクセリアという町です」










春風舞う季節と共に
〜僧侶との出会い〜
次の目的地はベクセリア!



―――――
思いの外、主人公がはっちゃけた性格になっちゃいました。

prev / next
[ 7 ]


[ back ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -