天恵物語
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第三章 09

「見てましたか、皆さん? 見事病魔のヤツを封印してやりましたよ、この僕が!」


ずっと闘ってたのは自分達なんだけれども。
しかし、確かに病魔を封印したのはルーフィンだったので、闘っていた三人は何も言わなかった。
というか、呆れて物を言えなかった……の方が近いかもしれない。特に戦士と僧侶が。


「フッフッフ……。これでお義父さんも僕のことを認めざるを得ないでしょうね。さぁーて、やることやったし、これでようやく遺跡の調査に手がつけられるってもんです」


ルーフィンは大きく伸びをして、調査に必要なのであろう荷物を持ち、奥にある階段に向かった。
階下には、きっとルーフィンの研究に役立つものが眠っているに違いない。


「ああ、皆さんはもう帰ってもらって結構ですよ。いても気が散るだけだし。それじゃ、ぼくはこの奥を調べてきますんで。報告の方は頼みます」


ふと気が付いたように三人を振り向いたかと思ったら、さらりと何でもないようにそう言うルーフィン。そのまま、すたすたと階段を下がって行ってしまった。
静かになった空間で、最初に口を開いた……というか文句を言い出したのは僧侶だった。


「な、なな……なんですのー?! あの失礼極まりない研究オタクは!!」


「け、研究オタク……」


奥まで聞こえているかもしれないが、僧侶はお構いなし。きっと、その研究オタクと呼ばれた張本人も気にしてはいないだろう。


「……ルーフィンさん、大丈夫なのかなぁ」


病魔だけでなく、ここには暗がりに棲みつく魔物が潜んでいたりするのだが。


「あんな自己中学者知るか。満足するまで調査させてやればいいだろ」


付き合っていられない、とばかりにアルティナはさっさと出て行ってしまった。
そりゃ、あんなことを言われたら二人が苛立つのも無理はないとリタは思う。
ルーフィンの言葉の端々から感じる自己中心的な考え方は、ただ自分の殻に閉じこもっている証拠。


(でも……ルーフィンさんはただ、知らないだけ)


ルーフィンさんの周りには、多くの人達がいるってこと。


口には出さず、リタはしばらく奥をずっと見つめていたが、僧侶に呼ばれ、後ろ髪を引かれる思いでその場を去った。















(気付いてくれると、いいな……)
09(終)




―――――
僧侶、早く自己紹介してくれ。


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