第三章 06-2
「……えっ、お義父さんが僕の護衛をあなたに頼んだですって?」
「うそっ! パパがルーくんのためにっ!?」
ルーフィンだけでなくエリザも驚いた。そんなに意外なことだったのか。
「……なるほど、あなたはお義父さんの手の者ってわけだ。こりゃあ、見事にハメられたな。えーえー行けばいいんでしょう?! ぼくが口先だけの男じゃないってお義父さんに証明してやりますよ」
「……えーっと、ルーくん? それはちょっと違うんじゃ?」
「そうと決まればノンビリしていられないな。すぐにでも祠へ向かいましょう。あなたも急いで来て下さいね」
ルーフィンは古文書やら何やらをカバンに詰め込んで上着を羽織り、研究室を出て行ってしまった。それはもう、すごい勢いで。
残された三人は、しばらく沈黙していた。ルーフィンの変な気合いに、圧されたからかもしれない。
沈黙を破ったのは、アルティナだった。
「……あの学者」
「ルーフィンさん? すごい張り切りようだったね」
「……上着の裏表逆に着てた」
「えぇっ、それは早く言ってあげないと!」
何を言うかと思ったら。でも確かに裏表が逆だったような……。
クスクスと後ろから笑い声が聞こえてきた。自分達の後ろといったら、いるのはエリザくらいのもので。
「あ、ごめんなさいね。それにしても……ルーくん、大丈夫かしら?」
さすがに、エリザも心配そうにルーフィンの出て行った扉を見つめていた。
それから、リタとアルティナにぺこりと頭を下げた。
「ルーくんのこと、しっかり守って下さい。お願いします! ……ケホッ、ケホン!」
咳込むエリザを見て、リタは急に心配になってきた。
「……エリザさん、さっきも咳をしてましたけど……大丈夫なんですか?」
「あ、いや……わたしは大丈夫ですよ。ただの風邪ですから」
ニッコリ笑うエリザだが、心なしか顔色も悪いような気がする。
「……このこと、あんたの旦那は知ってるのか?」
そう言ったアルティナを、エリザはキョトンと見ていた。が、理解するとすぐ隣にいたリタを思いっ切り手で押した。
「あれっ、なんで私?!」
今回に限ったことではない。
「いやだ、旦那ですって〜〜っ」
当のエリザは聞いておらず、彼女の言葉は語尾にハートが付きそうだった。
(顔色悪そうだったのは気のせい……?)06(終)
―――――
とばっちりを食らいまくりなリタさんでした。
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