第三章 01
「……で、結局帰れなかったわけか」
「えへへ……その通りでございます」天の箱舟は、結局動かなかった。そのため、リタは再びリッカ達のお世話になってしまうことに。
「仕方ないわよ、故郷へ帰るアテが無くなってしまったなら」
「そうだよリタ、いつでも来てねって言ったでしょ?」
宿屋の人達は、そう言って優しく出迎えてくれた。
「ありがとうございます……」
宿屋――特にリッカには、大変お世話になってばかりいる気がする。
「明日は、お城の東にある関所の方へ行ってみようと思ってるので……」
サンディ曰く、もっと星のオーラがあればリタに天使の力が戻るのではないか、そうすれば天の箱舟も動き出すのではないかと。
黒騎士の一件で、リタには天使の力が戻りかけているらしかった。
「ということは……」
ルイーダは、カウンターから意味あり気な笑顔をリタに向けた。
「また頼もしいお仲間が欲しいんじゃないかしら? いえ、欲しいわよね?」
「え、あ……そ、そうですね……」
問いが念押しになっている。同意の言葉しか許されないような気がして、リタはすかさず肯定の意を示した。
それに、仲間がいた方が心強いとは思う。
「そうなんですけど……なんか、次に行く場所の良くない噂を聞いて……」
関所を越えた先にある町は呪われているのだとか。
どんな風に呪われているのかは分からず、そもそも噂が本当なのかも分からない。
「だから、今回は一人で行った方が良いのかなって……」
「あぁ、それね。大丈夫大丈夫。そのくらいアルティナだったら平気よ」
「何を基準にして言ってんだ」
ルイーダは噂を知っていたらしいが、別に気にする必要なしとあっけらかんに言い切った。しかも、アルティナを仲間に入れること前提になっている。
「え、でも……」
「あのね、呪われているって言っても病気が流行ってるってだけなのよ?」
「そうなんですか?」
しかし、それではますます仲間を連れて行くのは控えた方が良いのでは……と思ったが、どうやらそういうわけでは無いらしい。
「しかも、その病気にかかるのは大体がお年寄りや小さい子供。アンタらみたいな青二才が町に行ったところで病にかかるってことは ほっとんど無いのよ」
つまり健康的な青少年ならば、病気になる確率は極めて低い……と。
「アルティナもずっと風邪で寝てたんだから、そろそろ体を動かしに行かないと。ってことで、いってらっしゃーい♪」
「ルイーダさん?!」
「病み上がりに病流行ってるところ行ってどうすんだ!」
そんなリタとアルティナの抗議も虚しく、宿屋から追い出された二人であった。
(やっぱり強制的!!)01(終)
―――――
ルイーダさんが横暴すぎる。
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