第二章 29-2
『思えば、黒騎士も哀れなヤツだったのう……』ルディアノ城でのことは、フィオーネが王に報告していたため、リタが城へ顔を出すと王は反省の色を浮かべていた。
黒騎士への理解を示した王は、リタ達への褒美だと言って宝物庫の宝を全て与えようとしたが……さすがに受け取れない。
せめてものお礼だと言われ、宝物庫の品を一ついただいたのだが。
「……そこで何で金ピカの十字架を選んだんだお前は」
「いや、一番地味そうなのをって思ったらコレになっちゃって」
城の宝物庫は目がチカチカしそうなくらい大量の金銀財宝が眠っていた。
さっさとここから退散しようと慌てて選んだ地味めな財宝が、この“金のロザリオ”だった。
「アルも来れれば良かったのにね……」
アルティナは城に行かなかった。……もとい、行けなかった。理由はもちろん熱による体調不良。
あの後、体調が悪化したアルティナはベッドに逆戻りしてしまったのだ。
またもエラフィタのソナにお世話になったあとでセントシュタインへ帰ってくると、念のため医者に見てもらい、程なくして完治。
数日間はベッドの上で過ごしていた。
――本当にアルティナにはお世話になった。
例えば、湖に飛び込んだり、武器忘れて敵陣に飛び込んだり、などなど。
「アル、ありがとね。ここまで来れたの、アルのおかげ」
アルティナがいかなかったら、どうなっていたことか。
「天使に戻っても……アルには見えるよね。そしたら私、ウォルロ村で守護天使やってるので、良かったら遊びに来て下さい」
「俺が行くのかよ」
不満げながらも、アルティナは苦笑した。
「お前がここに来ればいいだろ」
「……守護天使は休暇とか無いんだけど」
だから、護っている村と天使界の行き来しか出来ない。他の場所に行く機会は無いに等しい。機会があるとしたら、他の村町の守護天使に任命された時だけである。
「だったら抜け出して来い」
「職務放棄しろと!?」
そんなことしたらどうなることか……考えたくもなかった。
「だいたい、俺がそんな村辿り着けると思うか?」
「あ、そっか」
アルティナは極度の方向音痴だったということを忘れていた。
「じゃあ、私がセントシュタインに来るしか……」
とは言え、まだ天使界に戻れるかも分からないので。
「天使になったら、どうやって行くか考えとくよ」
もしかしたら、何年もかかるかもしれないけれど。
「というか、天使に戻れるのか?」
「そこが良く分からないところなんだけど……」
戻れなかった時のことは、あまり考えたくない。
「まぁ、とりあえず行ってこい」
「そうする。じゃ……またね!」
リタは満面の笑顔でお別れをした。アルティナも少しだけ笑っていた。
これが最後じゃないと、信じているから。
(また会える日まで、)28(終)
第二章完結
―――――
本編と少しだけ違うところあるけど、今後に影響は無いので見逃してください←
第二章終わった……!
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